いくらなんでもシンプル過ぎ
★★☆☆☆
1999年にアルクから刊行された本の新装版。
タイトル通り、シンプルに徹した韓国語入門書。韓国語の初級前半で習う事柄を簡潔にまとめている。ただ、いくらなんでもシンプル過ぎだと思う。大学での授業経験にもとづいて作られた本のようだが、確かに、授業で配る(最低限の)プリントを集めて1冊の本にした、という印象。この本を使って教えてくれる先生がいれば話は別だが、この本で独学するのはいくらなんでも無理だと思う(例えば、掲載されている例文があまりにも少な過ぎるし、練習問題・ドリルの類も一切ない)。大学等の試験直前の確認のためにザッと眺めるのにはいいかもしれないが…。
「キゾー式」のメリットは、著者の小倉氏が韓国語の専門家ではない(そもそも語学教育の専門家ですらない)故に可能となった「開き直り」にある。その道の専門家がどうしても脱することのできない常識的な発想やシガラミに縛られることなく、韓国語を学ぶ日本語ネイティブスピーカーの立場に立った彼の教え方はユニークで面白いと思う。ただ、残念ながら本書では、そのメリットが活かされていないように思う。「開き直り」が必要になるほど面倒な文法事項にまでは踏み込んでいないし、「日本語ネイティブスピーカーならでは」と思うような解説もほとんど見られなかった。
韓国語ネイティブスピーカーによる発音CD付き。類書の付属CDに比べると、かなり「拍」を意識した(メトロノームに合わせて「カm・サ・ハm・ニ・ダ」と発音していくような)発声で、最初は不自然に感じたが、聴いているうちに、こうした発声の方がパッチムの発音の特徴が明瞭に現れることがわかった。これはこれで勉強になった。
簡便な文法リファレンスとしてお薦め
★★★★★
『最もシンプルな韓国語マニュアル』の低価格化再発版。本書は、韓国語の教科書として使う本ではなく、韓国語を学習している人が、「あれ、この文法はどうだったけ?」「この変則活用の活用形はどうだったっけ?」と思ったときにぱっと引く文法リファレンス書。必要最低限の文法事項が要領よくまとまっているので、必要な事項がすぐ引けるし非常に便利。初級者だけではなく中級者でも十分活用できる。
従って、本書には教科書的、入門書的な使い方を期待してはいけない。あくまでも参考書として使うべき。また細かい文法を調べる、文法辞典的な役割も期待すべきではない。そういう用途には三修社の『韓国語文法辞典』をお薦めする。
前回の版は税別2500円と薄さの割に割高の感があったが、値段が下がって少し買いやすくなった。欲を言えば会話コーナーやCDは省いて、更に小さい版に縮刷し携帯に便利なようにして1000円程度で出して貰えると有難いのだが。