価格をさげてね
★★★★☆
良いところと良くないところを少しずつ。
まず前作同様、ストーリーがあちこちそれて(それは登場人物の多さからもいえます)終わりまで読み通すのが少しつらいです。そんな中で、子ヒツジに追われて逃げまどうところ、警備員の”小便小僧”をかどわかすところ、ピートとのデートを悔いるソフィーの前にコリンが現れるところはうまく書けてると思います。逆に、リオの講演のビラを見つけて「親戚に会えるかも」と期待に胸をふくらますところは、大事な部分だけに、想いをもっと熱く語らせてもよかったと思います。リオとルースの再会も、五十年ぶりに会った恋人同士にしては、淡白すぎるかしら。
言葉づかいが話題になってますが、ムリに口語に訳そうとしすぎです。これなら文芸社の『けせないきおく』のほうがずっとイケてますよ。「ちょっと目をはなしたら、もうパクっとる」「なにがすみませんやコラ」「おちょくんのもええかげんにせえ」などなど。(原作はドイツ語!)
視点を変えて。C.ラヴァーの中では、ユダヤ人の様々な習慣、たとえばローシュハッシャナ、タシュリフ、ヨム・キプールなどが、日本人にとってだけではなく、アメリカ(の非ユダヤ)人にとってもあまり知られておらず、多少差別的な目で見られていることが書かれてます。これによって作者は”ありのままの自分”でいることの大切さを伝えようとしているのではないでしょうか。それはとかく流行にまどわされがちなティーンエージャーへ向けた、作者の心からのメッセージだと私は受け取りました。