怠けながらは読めない
★★★☆☆
ひとつの小見出しで5ページ前後、読みやすい構成です。
時代へのピリッとした風刺の効いた文章で、こういうのを「洒脱」というのでしょうか。
著者が書きためたコラムがベースになっているようですが、大幅に加筆されたためか、三菱一号館美術館など、ごく最近の話題も入っています。
その意味で、よくある連載コラムの単行本化とは異なり、「リアルタイム」感があります。
この本を読んでいると、頭は怠けることができず、うーん、へぇー、ほぉー、と考えさせられます。率直に言えば、そこに、ちょっとある種の思想めいた臭いを感じてしまうこともありました。
ただ、それで疲れることがないのが、大きな特徴だと思います。
理由は、締めくくりにときおり出てくる詩にあります。これで、ふっと肩の力が抜ける思いがします。
書名は、小林秀雄の『考えるヒント』を意識されているのかもしれませんね。
時間に追われて自分を見失いそうな気がしている方、
ステレオタイプな社会批評に辟易されている方、
世の中へのちょっと違った見方に触れてみたい方、
などにお勧めです。ちょうど私がそうでした。思わずノートに書き写したくなる文章に出会える本です。