ギレリス&ヨッフムに匹敵する重厚さ、スケールの大きさが魅力…紛れも無い名演ですね。
★★★★★
いやあ…もう第一楽章の冒頭のアバドに驚愕する…私が聴いた彼のブラームス、ブルックナーのどの演奏よりも重々しい…まるでカラヤンが墓から出て来て振ってる様な威厳に満ちた全盛期を思わせるベルフィルのドイツ正統派の力強い響きに圧倒されます。 恐らくはポリーニも「こいつは凄い!」と思ったはずで一呼吸置いて柔らかく慎重に弾き始めるんだけど…オケに煽られて次第に熱くなり、速い連音符で少し指がもつれそうに…私はポリーニの中でピアノ演奏に於ける優先順位が変わったんだと思った…ギレリスの様な「凄み」すら感じさせる気迫溢れる強烈なる打鍵に心を鷲掴みにされますね。 第二楽章は如何にもポリーニらしいキラキラと輝くピアノ、しかも何てタッチが柔らかいんでしょう…ここでもアバドは弦の美しいレガートでオーボエのカンタービレを際立たせると言うカラヤン的な手法で…ポリーニの叙情性、内面性の照射も十分で官能的な美しさに浸れます。ギレリス&ヨッフムの厳しく深い内面を見詰める第二楽章とは対照的ですね。 第三楽章はギレリス&ヨッフムより好き。この曲やバイオリン協奏曲、交響曲二番の終楽章は愉悦に満ち溢れた祝祭的な盛り上がりが欲しいのですがポリーニの演奏は完璧です。左手の躍動感溢れるマッシブな打鍵は凄い!オケの重厚さも申し分無く、割って入るホルンの咆哮も気持ち良い…エンディングは余りの強奏にピアノがオケに呑まれてゆくんですが、それでこそ最高の協奏曲を聴いたと言う感動の余韻が有るんだね、いやあ…これは間違いなく名演ですね。