奇妙な比較の取り合わせであるが、分かりやすいのはなぜだろう?
★★★★★
「日本の歴史」といいながら、基本的には後醍醐天皇の南北朝と、夏目漱石の「こころ」という時空を超え、性質を異にする事象の比較をしている。
この一見何の関係もないような比較を通じて、日本人のあるいは、天皇制の本質を示している。
ただ、浅学非才の小生が言うのはおこがましいが、やはり、あまりにとっぴな比較の中から真実を引き出そうという試みは見事に成功しているように思えるけれども、他方、「この比較で日本の全てを論ずるのには無理があるのではないか」とも思えた。
なお、私は、山本さんは、他人に対する個人的論評から超越した、思惟の人と考える。
本多勝一への皮肉、または当て付けか?
★★★★☆
(上巻のレビューの続き)
本書で著者は、南北朝期以前と以後で天皇制の質が変わったと述べている。そして、天皇登場以来、ずっと同じ天皇制が維持されているという単純な考えをとる人たちこそが、実は本当の皇国史観の持ち主だと指摘している箇所がある。
また、『神皇正統記』や『太平記』などの古典からの引用が、原文のまま多数登場する。
古典や、近代より前の歴史が不得手そうな本多勝一を相当意識して、著者は本書を書き上げたような気がするのだが、どうであろうか?
いよいよ我々の行動様式が明らかになるのだ
★★★★★
上巻では、我々の日常が下克上の世界であることを説き、この下巻では、日々の行動様式が、いかに中国の属国であることによる、暗黙の行動に縛られているかが説かれる。いよいよ私たちの日常生活の寄ってたつところのルールが明らかにされる。
卓越した天皇論
★★★★★
例えば皆さんは「天皇制」について次の様に考えた事はないでしょうか?
「何故、天皇は自ら政治を行なわないのだろう?」「何故、首相や昔の将軍は自ら天皇になろうとしなかったんだろう?」「そもそも権威を皇室が司り、実務は時の有力者が行なう制度って合理的と言えるか?」等々。本書は天皇制に対する「素人質問」(つまりは本質をついた質問)に対して、プロが「天皇制とは~である」と答えている数少ない良書です。日本の歴史を考える上で、深い考察においては「天皇とは?」との設問に答えておく必要があります。全日本人の基礎的素養として勧めます。