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地球環境問題とは何か (岩波新書)

価格: ¥819
カテゴリ: 新書
ブランド: 岩波書店
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政治と科学と社会 ★★★★★
この本は,地球環境問題が国際政治の特性から必然的に第一級の世界的政治課題になったと分析している.まずは冷戦の恐怖に代わる世界共通のあらたな恐怖として地球環境問題を認識することから始まったとする.

そもそも,きっかけからして政治的であった. 科学者ハンセンは,科学論文に投稿中にもかかわらず,審査にかけられる投稿論文には書くことのできないことを加えて,アメリカ議会でセンセーショナルに地球温暖化危機を強調した.

著者は,第一章において温暖化理論の科学的根拠が曖昧であることを指摘しているが,だからといって対策にまい進することを支持していないわけではなく,むしろ積極的に支持している.

第二章の環境安全保障論においては面白いパラドックスを紹介している.「化石資源などの再生不能資源は,経済原理が働いて枯渇することはないのに対して,森林や漁獲などの再生可能資源は,取る側の抑制が効かずに枯渇してしまう」というパラドックスである.

第三章では,科学的データの政治的利用の一例として,アメリカが多用し,ECが引用を避けたUNEP作成の温室効果の図がある.地球からの効果的な熱の放出域となる波長帯(「大気の窓」と呼ばれる)は二酸化炭素以外の温室効果ガスの吸収域となっており,二酸化炭素の吸収域はすでに放出量が下がっている.よって,二酸化炭素によるこれ以上の温暖化への影響は少ないように見えるのである.

第四章では,気候変動枠組み条約の交渉に際しては,アメリカを軸に進んだという.これはアメリカに圧倒的な科学データの蓄積があるからである.そして同条約の目的は,「気候システムに対する人為の介入が危険にならないレベルに,大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させること」であり,そのレベルとは「気候変動に生態系が自ら適応でき,食糧生産が脅かされないで,持続あるかたちでの経済発展が可能となるような時間の枠内で達成されること」であるという.すなわち,同条約は,そもそも適応戦略であったのだ.

第五章の地球サミットでは,ブッシュ大統領の演説の表現に驚いた.「われわれは,この地球を先祖から受け継いだのではない.子どもたちから借りているのだ」という名文が含まれていた.またこの章では,生物多様性条約についても分析されている.その成立の背景には,先進国が発展途上国に多く存在する,生物資源の持続的な確保があったとする.

第六章では,地球環境問題を南北問題から捉えた,キューバのカストロ首相の名演説が紹介されている.

第七章では,北欧諸国がヨーロッパをまとめてきた環境保全の取り組みに焦点が当てられており,欧州の経験が今後の地球環境問題対処のあり方の鍵を握っていると指摘している.

第八章では,日本の進むべき道が示されている.官僚主導の日本の異常な政治・社会体制を指摘したうえで,自らデータを取得し,分析できる在野のシンクタンク,政策立案組織の必要性を論じ,一般市民の積極的な政治参加を呼びかけている.

私は,この本を地球温暖化論の真偽に興味がある方にお薦めします.なぜなら,冷静に客観的に地球温暖化問題を分析しているからです.
地球環境問題(特に温暖化問題)の根本的構造がわかる ★★★★☆
本書は、地球環境問題、特に地球温暖化問題、を自然科学と現代社会の中間にある、政治的性格をふんだんに含んだ領域として捉えています。筆者によると、地球環境問題が1990年代以降政治的問題として浮上した理由は、自然科学研究の内在的な発展ではなく、外からの要因、つまり政治的要因からであると論じています。具体的には、冷戦下の世界政治の興味は軍縮であったが、冷戦終了後に地球規模の脅威は環境であると認識されるようになったと述べています。また、地球温暖化問題は他の環境問題と異なり、観測研究の段階で不安定な要因を多く含んでいることを承知で、政治的決定を行っていく必要があると述べ、解決策として政策形成論のより一層の研究が進むべきであると述べています。私個人にとって新しかったことは、1988年が地球環境問題にとってのターニングポイントであるという指摘です。その年に、1992年の地球サミットのための枠組み転換が行われ、それ以後環境問題で覇権を握ろうとする国が出てきたということです。本書は、地球環境問題の構造を原点に立ち戻って解き明かしている良書だと思います。
未だ陳腐化していない ★★★★★
 よくある地球環境問題本かと思いきやさにあらず。筆者も書いている
ように、「地球環境問題とはどういう種類の問題か」ということについて、
地球温暖化の社会問題化から、地球サミットまでの科学と政治の関係分析
から解き明かした本である。
 政治学の側による政策論でも、科学の側による分析本でもなく、双方の

橋渡しができる筆者のような碩学だからこその視点を提供してくれる。