近代ヨーロッパの国家間戦争は「正しい敵」との戦いであった。国家政治の延長としての戦争であった。それ故、戦争は特別のゲームとして相互認知され、その戦闘員も犯罪なぞから聖別されていた。
ところが、ナポレオンに抵抗したスペインのパルチザンたちは自分たちの土地を守るため、新たな戦いを生み出した。それは国家政治の延長としての戦争ではなく、犯罪にも紛いかねない戦争だった。ここまでが「政治的なものの概念」の範疇だ。
レーニン以降、絶対的な無差別的な戦争が始まる。「絶対的な敵」との戦いである。これはゲームではない。徹底的な殺し合いである。
ここでシュミット理論は終わる。もはや「正義」は客観的なものではありえないのである。