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パルチザンの理論―政治的なものの概念についての中間所見 (ちくま学芸文庫)

価格: ¥1,155
カテゴリ: 文庫
ブランド: 筑摩書房
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続「友・敵理論」 ★★★★☆
軍人であるクラウゼヴィッツが、政治に着目しつつ
軍事を語ったのとは逆に、政治学者である著者が
軍事に着目しつつ政治を語った本。

具体的には、パルチザンをネタにして、著者の思想
である友・敵理論における「敵」概念をより詳細に
分析してみせ、「絶対的な敵」概念の登場を
警告している本である。

1963年頃に書かれた本でありながら、アルカイダ、
イラク、アフガニスタンに関する現在の状況までも
見抜いた本と言えよう。

とはいえ、同じ著者の手になる「政治的なものの概念」に
つけ加えていることは、そう多くない。
本書よりも先に「政治的なものの概念」を読むべきである
と考える。
戦争違法化が逆説的に招く殲滅戦 ★★★★★
まず、読む前に「政治的なものの概念」を読むか、役者解説に目を通すかはしておいた方がいい。
「正規戦」「現実の敵」「絶対的な敵」などのシュミット独自の用語の定義がわからないと、本文を読んでいても内容がつかめないだろう。

内容は、おおまかにはパルチザンの歴史的変化を記した「理論の展開」の章と、「敵」概念の理論的な枠組みを記した「序論」「最近の段階の局面と概念」に二分できるだろう。


「敵」概念の理論は、大まかに言って「在来的な敵→現実の敵→絶対的な敵」と歴史的に変化してきている。

「在来的な敵」は、王が傭兵を雇ってゲーム感覚で行う戦争における敵を指している。
「現実の敵」は、自己の存亡をかけて戦う戦争における敵を指している。
上記二つが「正しい敵」とされる。そこにおいては、戦争の限定と敵の尊重があるからである。

一方、「絶対的な敵」は、犯罪者としての敵、非倫理的な敵であり、そこにおいては敵は徹底的に殲滅されるべきとなる。
敵に対する尊重はされず、容赦ない戦争となるため、戦争はより悲惨なものとなる。

そして、戦争違法化は、戦争を遂行しようとしている者、またはそう目された者が「犯罪者」となり、その「犯罪者」を殲滅する戦争は「正しい戦争」となる。
そのため、戦争違法化が逆説的に悲惨な戦争を招くのである。

そのためシュミットは戦争は不可避であり、戦争の限定こそが必要であるという無差別戦争論をとる。

パルチザンについては、それは戦闘員と非戦闘員の区別を不可能にする、つまり戦争の限定を破壊するため、本質的に非正規である。
ゆえに、パルチザンを法的に保護する(例えば捕虜資格を与える)などは、人道的措置ではなく、むしろ逆である。
「敵」概念を考える叩き台として ★★★★★
ユダヤ人問題、ケルゼンの敵、第二次大戦の戦争責任などであまり評判の良くないカール・シュミットの手による戦争論・政治論。<パルチザン>による戦闘は近代世界の敵概念に大きな変容をもたらしたと主張しています。これは、立場的に正反対にあるベンヤミンとかなり類似した問題意識によるものであり、シュミット擁護者および批判者ともに必読の書です。特に、NYテロ事件の問題を深く考えるのにも有効だと思います。
テロ集団との戦争の予言書 ★★★★★
 「政治的なものの概念」は1927年に発表されたが、32年に改訂版が出ている。この書は、その63年時点での「中間所見」なのである。
 シュミットは19世紀までの政治理論の枠組みが崩れた現代政治を「友-敵」理論で定式化したが、その後現代政治はますます流動化を進めた。そこで改めて定式化することが本書の主題である。

 近代ヨーロッパの国家間戦争は「正しい敵」との戦いであった。国家政治の延長としての戦争であった。それ故、戦争は特別のゲームとして相互認知され、その戦闘員も犯罪なぞから聖別されていた。

 ところが、ナポレオンに抵抗したスペインのパルチザンたちは自分たちの土地を守るため、新たな戦いを生み出した。それは国家政治の延長としての戦争ではなく、犯罪にも紛いかねない戦争だった。ここまでが「政治的なものの概念」の範疇だ。

 レーニン以降、絶対的な無差別的な戦争が始まる。「絶対的な敵」との戦いである。これはゲームではない。徹底的な殺し合いである。
 ここでシュミット理論は終わる。もはや「正義」は客観的なものではありえないのである。