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進化論はなぜ哲学の問題になるのか―生物学の哲学の現在“いま”

価格: ¥3,360
カテゴリ: 単行本
ブランド: 勁草書房
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中途半端でわかりにくい論集 ★★★☆☆
「進化論はなぜ哲学の問題になるのか」とタイトルをつけたのなら、それに対する答えがすくなくともおお掴みでわかるような結論を示す論文を集めてもらいたい。この要望に答えてくれる論文が少ないのがまず第一の欠点。第二の欠点は、それぞれの論文をきちんとフォローしようと思えば、読者はもっと信用のおける概説書をあらかじめ読んでおかなければならない、ということ。例えば、編者執筆の第1章、自然選択の単位の問題など、このグループのメンバーが翻訳したソーバー『進化論の射程』第4章を読んでおかなければ苦労するだろうし、そちらの方がはるかに得るものが多い。本書で最も有益なのは、おそらく巻末の「用語解説」だろう。

しかし、こういった苦情を並べるのが評者の本意ではない。日本でも、曲がりなりにこういった論集が出されたことには意義がある。1950年代に、分析哲学や科学哲学の翻訳が出始めて、日本の思想的風土を変えていったことが思い出されるだろう。だが、いわゆる科学哲学のハードコアの部分は、現在に至るまで、日本に根付いているとは言い難い。生物学の哲学を志す人たちも、この歴史的先例を忘れずに、現場の生物学者たちの業績にもしっかりと当たり、統計学や進化ゲームの理論もしっかりとマスターした上で精進してもらいたい、というのが評者の希望。とくに、若手の執筆者の皆さん、こんな論文の書き方で、「幅広い読者を惹きつける」(まえがき)ことができますか?
進化論の哲学 ★★★★☆
九人の日本人による生物学哲学(進化論の哲学)の概説書。哲学、と言っても思想書ではなく、進化生物学における概念的な論争を徹底して分析したもの。扱われている問題は、おおざっぱに言えば自然選択が働く階層の問題、目的論的説明の問題、進化における確率論、種の定義と分類学、人間行動の進化と倫理の問題、となろうか。

著者ごとにもスタンスが異なり、これまでの論争のまとめに終始する章もあれば、個人的な関心を深く掘り下げて論じている章もありばらつきが大きい。ターゲットはよくわからない。入門書というわけでもなく、論文集というわけでもなく……このような議論に興味のある大学生向けにはいいかもしれない。内容に不満があるわけではないが、全体的に薄い本で一章当たり20pしかないのが厳しい。

気になったのは、一部の章で、新しい論点に触れておきながら「紙面の問題上これには触れない」といって関連論文に丸投げしてしまう記述が目立ったこと。中途半端に本文で触れるよりは、最後にまとめて関連文献としてコメント付きで挙げる方が読みやすさの点でも良かったと思う。