漆の器が使いたくなる・・・
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脱サラし塗師をめざすご主人と、能登半島・輪島の山奥に移り住むご一家。能登の自然がすばらしいなー、智子さんて美しい人だなー、でも面白い人だなあと、「うるし大王あっくん」のあたりまで、爆笑しながら読んでいましたが、「あとがき」のダンナ様、赤木明登氏のことばを読み、セーターの袖で目をゴシゴシ、ゴシゴシとこすっていました。かの村上春樹氏が「三大恋愛小説」をあげていました。「嵐が丘」、「グレート・ギャツビー」・・・・。大賛成でしたが、私の三大恋愛読み物は、ブロンテの「嵐が丘」、バルザックの「ランジェ公爵夫人」と、この「ぬりものとゴハン」になりました。 この本の内容は、タダモノではない・・・。 本物の漆の器で、毎日の食卓を充実させようと誓ったのでした。椀と盆をそろえよう。
美しきモノが 美しく観える 理由
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いわゆる雑誌タレント本的な たとえば 雅姫サンとかみたいなのかな
と 想えど ソンナ佇まいではアリマセン。
本のサイズも 雑誌サイズくらいなのかと想ったら
ちいさい 文庫2つ分くらいの大きさ。
中には 適度な写真と 適度な文章量で
「お山の暮らし」が 深々と綴られています。
たいせつな 美しい暮らしを覗き見せてもらってるカンジがします。
東京という都会の中で、
夫は 雑誌(家庭画報)の編集者、妻は ギャラリーの店員として
働いて暮らしていましたが、
アル日 飲んで帰った夫が こう発言。
「オレは 《職人》になるぞ。」
何の職人になるのかもわからなかったけど、
ギャラリーに勤めていた妻は、ヒトの手から創り出されるモノに
並々ならぬエネルギーと憧れをもっていたので
すかさず 「ほうほう そうですか そうですか!」と合いの手を入れて賛成した。
ソノ傍らには、生まれたばかりの 百(もも)ちゃんが眠っていました。
生まれたばかりの 赤ん坊を抱えて 夫が会社を辞めて
食べていけるのかどうかも解らない
未知の職人の世界へ飛び込むかもしれない。という状況で
のんびり 温かく 強く賛成して 支えられる妻っていうのは、
まず 並大抵のヒトでは アリマセン。
ソレから、能登半島っていうトコロの輪島にて
ちいさい 5年も放置されていた農家を借り受けた住まいに暮らしを移し、
夫は、「漆職人」という職人の道を目指すことになるのです。
会社勤めで 都会に暮らす。という
特段 変わった事でもない 《ふつう》とされてる生活。
年功序列や終身雇用が崩壊し、
国際競争や 企業内外構わず 生き残り合戦。もはや 同僚をも敵。
生き馬の目を抜く戦場と化している 企業の中で、
実はソレは、ヒトにとって、大変に過酷であらゆるモノやヒトを犠牲にする
苦行だと いうコトに そろそろ 皆気が付き始めている。
ソノ 生き地獄といっても過言ではない世界から
飛び立とう。と想うヒトにオススメ。
最後に夫の「あとがき」がついています。
妻に向けた ラブレターです。
信頼し 支えあい 愛し合う 家族や夫婦や暮らしって
たしかに《存在》するんだ?!という
オドロキと 希望を コノ本は与えてくれます。
何度も何度も読み返し ズット大切にしたい本になりました。
心根のやさしい人
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智子さんの人や物を見つめる優しい目線で、飾らない言葉で綴られた「お山」の暮らし。「子どもを産んで育てる。ごはんを食べてうんちをする。うれしい時は大声で笑う。悲しい時は涙を流す。いとしいモノを抱きしめる。くたびれたらぐっすり眠る。」この本を読んで、そんな当たり前のことが、簡単ではなくなっていることに気づかされた。巻末のご主人のメッセージにも胸が熱くなります。