成功したミュージカルで若者にも強く支持されている『Rent』が、ニューヨークの舞台から映画へと移行するのは驚きではなかった。特筆すべきは、この素材がいい歳の取り方をして、オリジナル・キャストの大半が銀幕への旅を行ったことだ。オフ・ブロードウェイでのデビューから映画の公開までに10年近い歳月が絶っているのだから、これはけっして小さな偉業ではない。1996年に始まったジョナサン・ラーソンのロック・ミュージカルは一筋縄ではいかないイースト・ヴィレッジのネオ・ボヘミアン的な生活に基づいており、時折陳腐に感じられる部分もあった。だが、映画の『Rent』はぎりぎりの生活についてのブロードウェイのファンタジーという側面を強く感じさせるようになり、新しい要素がこの映画の好材料として実際に機能している。あらたに加わった2人のキャストのロザリオ・ドーソン(ダフニ・ルービン・ヴェガの代わりでミミ役)とトレーシー・トムス(フレディ・ウォーカーの代わりでジョアン役)はよく演じているし、感情もこもっているが、充分に力強いとは言えない。この2人はアンソニー・ラップ、 イディナ・メンゼル、ウィルソン・ジャーメイン・ヘレディア、テイ・ディグスといったベテラン勢の影に隠れている。もちろん、ベテランたちは舞台で自分の役柄を完成させる機会があって有利だが。オリジナル・キャストのレコーディングを聴くこともできる。実力のあるニューヨークのパフォーマーたちが自分たちの作品で再び堂々と演じる様子を聴けるのは喜びだ。このサウンドトラックは舞台のファンを喜ばせ、おそらく新しいファンも獲得できるだろう。--Elisabeth Vincentelli