風情ある舞台でのレトロなストーリー展開
★★★★☆
ひなびた旅館を切り盛りする美人女将に義娘と実娘、しかし夫の死去から旅館は傾き、借金先の強欲男に狙われていたところに現れる主人公という何ともレトロな風情というか昭和チックなテイストを醸す作品である。訳ありな一人旅の途中に偶然立ち寄った主人公が、これまた偶然にも調理師だったことから「流れ板」よろしく旅館を立て直していくストーリーを軸に、女将とのロマンス的情交と義娘や実娘の「初めて」が描かれる。血縁の有無や先を越された嫉妬などで遠慮したりギクシャクしたりする内に女将のピンチが訪れたりもするので、読み物としてなかなか面白い。
基本的に愛情を育む大人の物語なので、メインの“お相手”は当然女将となる。お淑やかで上品な和装美人ながら7年の空閨に我慢できず自慰に耽ったりするギャップが魅力で、主人公を意識するあまり辛抱たまらずおねだりしてしまうのが最初の風呂場での情交である。亡夫への操から一度きりと思うも却って昂ぶりを覚えてその後も関係を続けて情が移っていくのが良い。調理場や客間といった「いけない場所」で、情交の度に体位に変化をつけるのがいやらしく、亡夫では得られなかった未知の愉悦に絶頂を重ねる女将が、旅館だからと声を我慢するもやっぱり大きく喘いでしまい、それに戸惑う主人公である。勝気な割にウブな義娘や耳年増な実娘も悪くない。好対照には描かれていた「初めて」の描写だが、これがもっとはっきり描き分けられていたらさらに良かったと思う。女将+義娘や義娘+実娘といった3Pもあるが、淫らスイッチが入ってからの積極さや大人の色気も抜群の女将にはどうしても及ばないところがあるし、「生娘2人も要らないなぁ」という感じがしないでもない。この辺りは好みの分かれるところかと思うが、全体として優しい雰囲気に彩られた心地良い作品である。