インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

近世数学史談 (岩波文庫)

価格: ¥756
カテゴリ: 文庫
ブランド: 岩波書店
Amazon.co.jpで確認
19世紀の数学史・数学者列伝。人物伝としてなら十分楽しめる。 ★★★★☆
最近、文庫本が復刊したので読んでみました。大学教養時代の数学で御馴染の名前(※)も出てきて「彼らが構築した数学を教養時代に学んでいたんだなぁ」と懐かしく思い出しました。また付録として高木先生の回顧録とヒルベルト訪問記が収録されています。
他レビューにもある通り、本書で扱われている数学の話はかなり難解な部分を含みます。それらの多くは大学で数学を専攻していた人でないとフォローできないのでは? また日本語もかなり古風で、今時の若い人(と某首相?)には敷居が高いかも?
しかしながら、人物伝としては面白く読めました。特にガウスの数字感覚の鋭さにはビックリです。(4.8104の自然対数は1.5708(≒π/2)、と気づく人は世界に何人いるんでしょう? 暗算の達人・フォンノイマン級の数学者には常識?) このような具体的な数字から一般的な事項へ導くような帰納的議論をまず行い、得られた一般的な事項から演繹的に議論した結果を公開したのだろう、ということが読み取れます。「一般論からの演繹のみからは新しい物は何も出てこない。空虚なる一般論に捉われないで、帰納の一途に精進すべき」というメッセージは自然科学一般に通じることでもあり、肝に銘じたいですね。
また、高木先生がご自身の半生を振り返る回顧録は読み応えがあります。「類体論」の完成により日本初の国際的数学者となる著者がドイツ留学時に如何に「50年分の遅れ」を取り戻したのか。後に第一次大戦で海外からの情報が入ってこなくなった時に如何に「類体論」を独自に完成させたのか。この経緯を読むと何だか勇気("研究者魂")が湧いてきます。情報が隔絶しても「学問をしようというなら、自分で何かやるより仕方が無いのだ」と開き直って新しい発見に繋がるという話は、朝永先生の超多時間理論完成とも通じるエピソードですね。

(※)ガウス、ラグランジュ、ラプラス、ルジャンドル、モンジュ、フーリエ、コーシー、アーベル、ヤコービ、ガロア、ディリクレ、メビウス、プリュッカー、スタイナー
楕円関数論の黎明 ★★★★☆
ガウスとアーベルの活躍を中心に、楕円関数論の黎明期に焦点を当てます。力学の教科書で楕円積分はお目にかかることがありますが、掘り下げて学ぶことは無いと思います。
おおもとの着想は、三角関数のアナロジーで楕円積分の逆関数をとらえ、楕円積分による弧長を円周に対比させ、加法定理、乗法定理を構成して行くといったところです(レムニスケート関数は曲座標表示です。θが弧度、ρが動径。これで弧長を求めれば本書の楕円積分の表示になります)。他の本で見る一般的な説明では、いきなり複素変数の二重周期関数だといわれて面食らいますが。。。
ぱらぱらとめくった感じでは、「戸田盛和:楕円関数入門」が私のような素人には一番わかりやすいものと思われます。寺田寛一の「自然科学者のための数学概論」も詳しく載っているようです。
歴史物語ではありません! ★★★★☆
以前共立から出ていた本が岩波文庫として再登場した物である。お話の部分は面白いが、数学の部分は難しい。恐らく複素関数論、群論の初歩は心得ていないと理解できないと思う。いや、理解していても生半可な理解ではとても読めない。高校生のときに背伸びして解析概論を読んでいた私に高校の先生が共立版の本書をプレゼントしてくれたのだが、余りの難しさに数学科進学を断念した。以下のお二人が言われるように素晴らしい本であり、余人をして書かしむること能わざる本ではあるが、単なる歴史のお話ではなく、数学的内容豊かな「難しい」本であるという事実に気をつけて下さい。
日本を代表する数学者、高木貞治による数学史 ★★★★★
高木貞治は日本を代表する数学者でヒルベルトの弟子であり、類体論を創始したことで知られる。『解析概論』『初等整数論講義』『代数学講義』等、現在でも教科書の筆頭に押される書物を著したことで、若い人も名を知っている方が多いと思う。日本の数学史で強いてふたり挙げろと言われれば関孝和と高木貞治、ということになるのではないか。そんな日本の至宝が書いた数学史で、現在活躍されている数学者の先生には若き頃この本を読んで触発され、この道に進んだ方も多いと聞く。やっぱりガウス中心であるが、ディリクレ、アーベルやフランスの数学者たちにも話が及んでいる。話題としては楕円関数論という分野が多く取り上げられていて、この分野はあのフェルマー大定理の証明に深く関わったものである。その若い人には少し読みにくい部分もあるが、近代数学が登場した古き良き時代を活写する本書を紐解き、数学史の芳しい香りに触れてみるのも一興かと思う。