本書の特徴
★★★★★
訳者が本書の内容についてどのように考えるかを、本書の「あとがき」から拾っておきます。
(1) 本書の内容は、「私の考えを正しく突き止めえた」ものだとカントが高く評価したように、信頼できるものである。
(2) 本書の第1章は、シュルツが『純粋理性批判』における諸論証をできるだけ忠実にではあるが、分かりやすく整理して手際よくまとめた、『純粋理性批判』のダイジェスト版である。
(3) 本書の第2章は、『純粋理性批判』第1版全体の論点と成果をシュルツが吟味して整理したものである。
(4) 『純粋理性批判』に関心をもつ人は、本書によってとりあえず『純粋理性批判』第1版の主要な論証を手早く知ることができる。
(5) シュルツは『純粋理性批判』そのものを読むための橋渡しとして本書を考えている。
訳者からみて本書は総じて、著者シュルツが類まれな理解力によって、カントの『純粋理性批判』の第1版の論述を、可能なかぎり筋を通して正確に分かりやすく要約すべく努力した成果だと思われる。原書には3つの版があり、フランス語等への翻訳もされ、『純粋理性批判』が理解されるために大きな影響を及ぼしたと考えられる。
なお本書には少し詳しい索引が付いている。これは原書にはないので、読むために必要なわけではないが、(1) 索引項目の原語がわかる、(2)項目のテーマ別に関連箇所を読み返して、理解を深めるために活用できるという利点がある。