いいリズムといい落ちと。
★★★★☆
日経のOB記者が書きつづった本だそうだ。
新聞記者の書いた文章というのはどこか習い性のようなものがあって、読みやすい気がする。特に社会部系の記者のものは。
どんな出自の記者が書いたかは知らぬが、北は網走監獄から南は南大東島の製糖工場跡まで。日本の近代化の中で建てられ、今は一線を退いたり、現役だったり、転用されていたり。
そんな建物群の物語である。
選んでいる中で日経らしいな、と思うのは日立鉱山大煙突だったり、日本煉瓦製造ホフマン輪窯(埼玉県深谷市)だったり、豊田自働織布工場だったり。ほかの新聞社なら選ばないかな、という遺産が載っているのが楽しい。
今、リコール問題で揺れるトヨタ自動車が実は自動織機の特許をイギリスのメーカーに10万ポンドで売り払い、それを原資に自動車製造に乗り出したとは知らなかった。
最後の南大東島の製糖工場。ニューギニア近海で火山島として生まれた島自体も年に7センチずつ、北西に動き続けているというオチはなかなかにスマート。ぜひ原文を読んで欲しい。