後期高齢者医療制度の問題点と課題が浮かび上がる
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後期高齢者医療制度は、全国民に関係する健康保険制度の根幹的な制度でありながら、その立ち上がりから非常に不幸な状況に見舞われた。「姥捨て山」「早く死ね」というような不穏当な言葉が飛び交い、マスメディアに煽られ、政争のネタに使われ、冷静な議論なく誕生し、すぐに廃止が検討されることとなった。
この本は、制度組成にかかわった医療関係者や官僚、政治家、更に実際に後期高齢者の治療や介護に日々携わっている方々に対して13件のインタビューを丹念に行い、その成立過程から制度自体、運用等についての、理論的な問題点から感情論的な課題まで幅広く浮き上がらせ、まさに現在見直しが進められている後期高齢者医療制度についての基礎的な視座を与えるものである。
ある程度の基礎知識が求められるが、後期高齢者の現場の状況も含めて簡潔かつ的確に理解が図られる書である。