圧倒的な声の輝きに包まれて
★★★★☆
一人の声でも十分満足できるのに、それが重層的に折り重なるわけですから、迫力の点でも感動の点でも、強烈な印象を残すのは当然と言えるでしょう。
アバの「ザ・ウィナー」をソット・ヴォーチェで歌う前半の雰囲気が好きです。美声ですから、優しい歌唱もまた魅力的です。切ない雰囲気が息の巧みな使い方から上手く伝わってきますし、透明感あふれるソロと重厚なコーラスの対比が上手い、と思います。
正統派のベルカント唱法を身につけていながら押さえた発声は、誰にも聞きやすく受け入れられるでしょう。オペラの勉強をしていたメンバーも地声を効果的に生かしていますので、どの音楽ジャンルの愛好家からも愛されるものだと思います。ちょうどミュージカル歌手の発声に近いのかもしれませんが、高音の豊かな響きは格別です。
「シー」もこれだけ輝かしい声の饗宴で表現されればまた趣きが変わります。3分足らずの演奏時間ですが、輝かしいばかりの艶やかな声に聴き惚れています。このあたりの声域は訓練のたまものですし、一朝一夕に身につけることはできない領域でしょう。力強さを増した時に、より豊かな響きの発声へともっていくところがゾクッとくる瞬間かもしれません。神のようなパフォーマーと名付けられたイル・ディーヴォの魅力を余すところなく堪能できる曲でした。
様々なアーティストの歌唱で聴き慣れている「アルビノーニのアダージョ」もその透明感のある、抜けるような高音の冴えはとても神々しく、心地よさを感じ取りました。量感あふれる4人の重唱は、リスナーを圧倒させるものがあります。
アメリカ、フランス、スイス、スペイン出身というメンバーが織りなす声の重なりは、それぞれの出自同様、多様で多彩な魅力に包まれています。