海軍の暗黙の掟
★★★★☆
戦記に詳しい方は、護衛戦闘機が六機と聞いただけで内容が分かることでしょうね。そう山本五十六長官が最前線を視察して将兵を鼓舞しようと、一式陸攻にてブーゲンビル島へ向かった際、護衛任務についた第二○四海軍航空隊の零戦六機のことです。
山本長官戦死の重責を一身に背負い、黙して語らず散っていった六名のパイロットたちに、いまひとたび生命を与えてやりたいとする著者の親心というか、その気概には純粋に感動しました。みなさんきっとあちらで喜んでいることでしょう。
6機編隊の指揮官だった、部下思いで責任感の強い森崎予備中尉、強い精神力を持ち、森崎中尉をもり立てる日高上飛曹、豪快な性格で猪突猛進型、個人感状で有名な杉田庄一飛兵長などの個性的な方々を内面から描き出し、それぞれの心の動きまでをも表現しているのが素晴らしい。また、飛行隊長・宮野善治郎大尉の心の葛藤や、階級の分け隔てなく部下に愛を注ぐといった姿勢にも感動しました。
長官機が被弾して降下していくさま、陸軍によって発見され海軍陸戦隊に遺体の引渡しされた際の様子など、実際に関わった方達からの情報を集約しており、詳細にこの事件を知る事が出来ますので、貴重な資料にもなると思います。
彼らは決して裁かれたわけではないのだが、海軍の暗黙の掟によって、二度と内地の土は踏めないものと覚悟した。この時の彼ら六人の気持ちはいかばかりであったか・・・。その少しでもこの本によって感じ取ることが出来たような気がします。