デジタル時代の著作権のあり方とは
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著作権法は、こと今日のようなデジタル、ネット時代には対応しきれていないという風潮はある。
本書では、既存の著作権法理解を述べるのではなく、今日の流れに合わせた著作権法の考え方を提示してくれている。
著作権はしばしば所有権のように見られることがある。
しかし、著作権と所有権の大きな違いとして、排他性の有無を挙げることが出来る。
物は別の人が持っていたら自分が所有することはできないが、情報は別の人が有していようが自分もまた所有することが出来る。
だから、著作権は「使用の制限」という形をとっている。
また、著作権には経済的側面と人格的側面とがあるという指摘はなるほどと思った。
要するに、「オリジナルな著作物の利用により儲ける権利」としての経済的側面と、「著作物に表れている自分の尊厳を守ってほしい」という人格的側面の両方が、著作権には含まれているのである。
本書では、ネット時代になって複製・流通が容易になり、ますますその経済的側面を強めているという見方をしている。
ただ、これについては私はむしろ逆に、ネットでの発信は利益目的というより「自分で何かを書いて、それを人に読んでもらいたい」という人格的要素が強いものが多いので、逆に人格的要素が強まるという予測も成り立つのでは、と思う。
ともあれ、この二者をきちんと区分して考えることは極めて有益だと思う。
新しいタイプの著作権法の教科書であり、なかなか重いが意義のある一冊であろう。