食文化を多角的に捉えていて刺激的な本だ
★★★★★
まず、中身の濃い本だ、という印象。食について社会学、歴史、地域文化、生活といった複合的な視点で書かれた本に出会ったことがなかったので、非常に刺激的だった(引用されている文献を見ると、フランスでは社会学の視点で食にアプローチしている本がかなりあるようだが)。
一般家庭の食文化の変化や、現代の普通のフランス家庭の食事についての記述が特に新鮮であった。この本に描いているような食事風景が今のフランス家庭で一般的だとすると、日本はかなり以前にこの風景を失ってしまったような気がする。ミシュランの評価だけが世間で喧伝されているが、家庭での食事風景を見る限りフランスの食文化はまだまだ健全だという印象を持った。