待望の入門書にして研究書
★★★★★
本書は二部構成になっている。前半は論語の注釈書の二千年の歴史を、簡潔にかつ一貫性をもって描いている。第二部は論語本文の解釈をめぐり、前半は様々の解釈の違いを浮き彫りにして、後半では論語道徳の根本についての著者の見方を披瀝し、その現代的意義を強調する。わずか二百ページほどの小さな本でありながら、論語の本質とその二千数百年の歴史の要点が明示されている。最近、論語について多数の本が出版されているが、ほとんどは素人の手になるもので、儒教の専門家は論語への言及を回避してきたフシがある。北京大学副教授と東京大学准教授を兼任する俊英による貴重な一冊であり、論語に少しでも興味を持つ人は必読である。