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ゲーテッド・コミュニティ―米国の要塞都市

価格: ¥2,415
カテゴリ: 単行本
ブランド: 集文社
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ゲートはアメリカ社会における緊張関係の象徴 ★★★★☆
タイトル通りゲーテッド・コミュニティ(要塞街)を扱った本である。ゲーテッド・
コミュニティとは、住宅地の周りをゲートあるいはフェンスで囲い、出入口を限定
した住宅地である。あるものは、警備員がパトロールし、出入口を監視するといった
保安を強化している。また、あるものはゲートの内側にゴルフ・コースやその他アメ
ニティ施設や商業施設を併設している。

日本人には馴染みのない名前とアイデアであるが、ゲーテッド・コミュニティは1997
年時点でアメリカに20,000ほどあると推定されている。全体で500万戸が存在し、1つ
のゲーテッド・コミュニティの平均戸数は291であるという(1997年時)。

筆者らはゲーテッド・コミュニティを3つにとりあえず分類している。ライフスタイル
型コミュニティ、威信型コミュニティ、保安圏型コミュニティである。これはゲート
がどういう目的のために設けられたのかとも関連していて、社会的地位のため、プラ
イバシーのため、レクレーションのため、犯罪と交通公害の締め出しのためといった
動機からゲーテッド・コミュニティが選択される。アメリカでも「分離主義」「排他
主義」と批判されることもあるようだが、居住者には居住者なりの理由がある。筆者ら
はその理由を充分に理解したうえで、その問題点をまとめ、ゲートによらない方法に
よるべきだと主張する。

ゲーテッド・コミュニティの問題点は、公共性のなかで処理される問題群(例えば治安)
を、特定の人々と結びつき私的政府を仰ぐことで解決しようとすることにある。
解決と言うと聞こえは良いが、本書からのイメージで言うと同質性の高い人たちの間で
合意することで、個人のプライベートを守り、可能な限り周囲の人との交流をなくし
煩わしさのない居住空間をつくることにある。その居住者らにとって、ゲートの外への
関心は二次的なものにならざるをえない。また、ゲートの外に住む者に対してゲートは
排除感覚を象徴付けるものとなり、また空間的な断絶が経済格差や機会の格差を生み出
す装置となる。

確かに、郊外化は1950年代以降アメリカで進行したが、それだけではあきたらず、ゲート
での排除は1980年代以降顕著に広まりをみせている。ゲーテッド・コミュニティが一部
地域での状況ならいざしらず、アメリカのいたる郊外で見られ、またこれからも増えて
いく兆候がある。筆者らはこれがアメリカの民主主義体制を揺るがす事態になるのでは
なかろうかと気に懸けて、代替案を最後には提示する。

ゲーテッド・コミュニティを選択する居住者たちの論理やゲート内の近隣関係、ゲーテッ
ド・コミュニティをめぐる議論などについて大まかには本書で把握できたように思う。
最後に200ページほどで内容も分析的というよりも記述的なわりに訳が若干読みづらく、
読むのに時間がかかったことを付け加えておく。
パブリックを考える上で興味深い ★★★★☆
原著のGated Community in the United Statesが発表された1997年
当時の各分野に与えた衝撃は大きかった。
今回邦訳されたことにより、目にしやすくなったので
お勧めしたい。
ゲーテッドコミュニティの様子を思い浮かべることは簡単である。
塀に囲まれ門がついた住宅地である。
この塀と門がポイントであり、セキュリティマンションのように

セミプライベート、セミパブリックエリアの囲い込みとは、
本質的に異なる問題を内包しているのである。
あるエリアの囲い込みは、つまり、市民に開放され共有されるべき、
街路、歩道、公園、ビーチ、川、小径、運動場への侵入の排除、
つまり高所得階層による「公共財の非共有」を意味しており、

空間面・安全面において国がになってきた「財の再配分機能」を
高所得者層が拒否するという、現代国家への巨大な政策的帰結を
生み出している。城塞都市を思い描いてもられば良いかもしれない。
所得階層の2極化が進む若年層に読んでほしい一冊。