1950~60年代のオトナ向けポピュラーらしく、この盤もストリングスたっぷり。時には混声コーラスのてんこ盛りで過剰演出サービスしてくれてます。今となっては古臭さが先立ち、聴き手を選ぶアルバムであるのは否めない。
選曲がA級スタンダードメインなので、「ロンドン・バイ・ナイト」ほどB級な泥臭さはありませんが、渋い名曲(「ラッシュ・ライフ」「ベッドで煙草は~」)でもヴァースを省いてたりしてるところに、「コマーシャルな軽さ」を感じてしまう。この2曲はヴァースがあればこそ格調も高くなるのに、もったいない……
「サムシング・クール」なんざ、バックコーラスが「やり過ぎ」です。オリジナルのジューン・クリスティとピート・ルゴロ楽団のクールで爽やかな味わい、その足元にも及ばない。
ともかくこのオケの弦の使いまくりは好き嫌いが出るだろうなあ。
とはいえ、ジュリー本人の歌には文句なし。おなじみのハスキーヴォイスを堪能させてくれてます。
「あなたと夜と音楽と」は、ジュリーの良い意味の素っ気なさに、オケのノリが合ってスマートな仕上がり。「ハウ・アバウト・ミー」「ザ・パーティーズ・オーヴァー」はジュリーの気怠い歌とオケの力の抜け加減が同調して、良い出来。
全体に見ても、頑張り過ぎのオーケストラが却ってジュリーの足を引っ張ってるのが残念なアルバム。ジュリーを愛するオールドファンか、ストリングス入りのムードオーケストラに理解のある方には、お薦めか。