「裸の大将」の別の一面
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「裸の大将」の愛称でおなじみの,山下清の作品が掲載されています。扱われている風景は,タイトルの通り,東海道五十三次。テレビドラマなどで馴染みのある放浪時代の作品ではなく,画家として有名になってからの取材に基づく作品が収められています。
山下清というと,長岡の花火などの貼り絵作品が有名です。でも,この本に収録されているのは,ペン画。失敗の許されない一発描きなだけに,一つ一つの風景が山下清にどのように印象付いていたのかが鮮烈に表れているように思われます。絵だけでなく,紀行文ともエッセイともつかない短文が,各宿場ごとに載っています。こうした文章を眺めていると,山下清の旅に自分も同行して,彼の横でぼーっと景色を眺めているような,そんな気持ちに誘われます。
星を4つとしたのは,見開きの状態で絵が掲載されているため,絵の中央部が見にくいからです。そうはいっても,作品の雰囲気を味わうには充分かとも思いますので,是非手に取ってみてください。内容の質を考えると,実にお買い得な価格だということも付け加えておきます。