ジャーナリズムの新たな地平を探る書
★★★★☆
いろいろな意味でマスメディアが閉塞状況にある今日、果たして既存メディアの再生は可能なのか、インターネットの新聞・放送,そしてビデオ・ジャーナリズムに現状を打破する力はあるのか.また大学等の場でジャーナリスト教育がいかに成されるべきかを、それぞれの現場から問題提起したのがこのシリーズ最終巻である。
一回の報道で数百万人単位の受け手に影響を及ぼせる既存メディアに対し、本書で紹介されている様なネット新聞・ネット放送が持つ個々の力はいかにも脆弱だ。ただその反面、彼らはネット空間上で一人ひとりの受け手とダイレクトに繋がり、国境を越えて拡張することができる。人々の価値観の多様化が進んでいく中で、新たな可能性を秘めたジャーナリズムの地平が、ここには確かに広がっているように思う。
ジャーナリズムは再生するのか
★★★★★
ジャーナリズムの崩壊。これは、ここ、3,4年のテレビのニュース番組を見れば、明らかだ。私が幼い頃には、ニュース番組は「おとなの世界」であり、シビアなものだった。しかし、最近は、そうは思えない。それは、私が「おとな」になったからではなく、ニュース番組の質が落ちてしまったからだ・・。
多くの人が、このことを嘆く。「ジャーナリズムの条件」のシリーズは、この嘆きから出発し、本書で4冊目だ。これが、かつて「おとな」の出版社の代名詞と言われた、岩波書店から出版されていることも、象徴的だ。
そして、再生は容易ではない。そのことが、本書を読めば、良くわかる。今は、ジャーナリズム冬の時代であり、冬が過ぎれば春が来ると思いたいが、このまま凍死してしまうのではないか、とすら思える。
この本は、ある程度の年代以上の人には、あまり意味がないかもしれない。ジャーナリズムが再生するのには、長い忍耐と体力が必要だからだ。これから社会にでるような、若い人たちにこそ、読んで欲しい。