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情の力 (五木寛之こころの新書)

価格: ¥840
カテゴリ: 新書
ブランド: 講談社
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「こころの砂漠化」に抗して ★★★★★

 「いまの日本人に大切なのは『情』ではないか」という書き出しで始まる当書は、全百題の随感で構成され、「五木寛之こころの新書」シリーズの2冊目となる。同書のタイトルは「情の力」であるが、この「情」というものを一言で表すならば、それは「こころ」であり、そして、「情」とは“人間の湿り気”のようなものであるとする。従って、「情が欠ける」ということは、「すなわちこころが乾いてひからびている」(本書)ということになろう。

 五木氏は、「いろいろなものが『湿式』から『乾式』へ、ウェットからドライへと転換してきたのが戦後の歴史」(同)と振り返る。それは「まるで濡れタオルにドライヤーの風を当てるようにして、こころと社会を乾かしてきた」(同)のであり、その結果、現代は「こころの砂漠化」、「こころのデジタル化」(仏教のこころ)が進行、蔓延しているとする。さらに、「こころ」が砂漠化する、ということは、自他の「いのち」の軽視につながっていく。

 なぜなら、「いのち」は「こころ」が支えているからだ。その「いのち」が軽い、ということは、前述した「こころの乾き」に由来している。まさに「乾いたもの軽い。湿度をおびたものは重さがある」(仏教のこころ)からだ。五木氏は、昨今の「こころの砂漠化」を憂い、この「湿度」の大切さを説き、「湿り気を帯びた人間のこころ」(本書)の回復を、「乾燥しきったこころの荒野に、清冽なオアシスの水を注ぐこと」(仏教のこころ)を願うのである。
抄は、抄 ★★★☆☆
作者の思いのエッセンスが詰まっている、ただし、詰めすぎて、2ページに収めるのに無理のあるものも多い。やはり、エッセンスだけでは、通じないものもある。抄で済ませるには、無理があり、日本人のこころをおすすめする次第。
老いを迎えて五木が見たもの ★★★★★
 戦後、いや明治維新以後といってよいか?日本の知識人は「知」あるいは「理性」の確立に専念してきた。その影でとらえどころのない「情念」は前近代的なものとして捨て去られ、抑圧された。抑圧された情念の力が、たとえば先の大戦につながった狂信的なナショナリズムに転化していったのではないかと私は思う。その一方で庶民は健全な情の世界を形作ってきた。

 非常に興味深い一文は「『美空ひばりは日本の恥』ではない」という一文だ。本書のエッセンスが集中している文だと思う。戦後、羽仁五郎は「美空ひばりは日本の恥だ」といった。また中野好夫は「演歌とか流行歌は便所のようなもので、なくちゃ困るが玄関に出すようなものじゃないよ」といっていたという。五木は今、歌謡曲、演歌に目を向けているという。「情の力」。そこにはまだ未知の、未開拓の可能性が眠っているのではないか。