「再建請負人」の仕事と「雇われ経営者」たち
★★★★☆
米国ではいわゆる「雇われ経営者」の市場が確立しており非常に流動的であるという印象がありますが、改めてそれを強く感じさせられます。
本書では、平時の経営ではなく危機に陥った企業を再建することを"専門職"として生きられた著者の経歴が綴られており、「再建請負人」という仕事の存在とその生き様について大変興味深く感じました(おそらく実際は想像を絶する過酷さだと思いますが・・・)。
おそらく、その「雇われ経営者市場」の"商品"となって企業を渡り歩く経営者たちは、やがて、多かれ少なかれ自らの権力を振りかざして自らの欲を優先させていき、結果的にそのような一部の人々だけがどんどん豊かになっていくというのが現実ではないでしょうか。
著者がモットーとする、あらゆる利害関係者に対する誠実さ・正直さという姿勢は、経営者の資質としてごく当たり前のように思われますが、おそらくそれが実践できている経営者がいかに少ないかということを同時に物語っているように感じます。
部下の視線で
★★★★★
20年前ベストセラーになったアイアコッカ氏の「闘魂の経営」や一昨年に出した「なぜ真のリーダーがいないのか」で書かれなかった(アイアコッカが書きたくなかった)クライスラーの社内事情が読めて興味津々でした。
まあ、自分の事はかっこよく書きたいのが人情でしょうが、あの人は自分の失敗を認めたがらない(笑)点でミラー氏とはかなり異なります。
クライスラーの10年ローンの借入金をわずか3年で利息も含めて完済した話は「闘魂の経営」ではまるでアイアコッカ一人の判断のように描かれていましたが実はミラー氏が強く勧めた事や、何故、次期会長と目されていたジェラルド・グリンワルド氏(この方もクライスラー時代の経験を本を書いています)が畑違いの航空業界に転職してしまったのか?1992年の会長職引退も本人は勇退であるかのように書いていますが実はいつまでも引退をしようとしないアイアコッカに業を煮やした役員会から追放された事実など、当時の部下の目から赤裸々に描かれていておもしろい。
アイアコッカ氏は自書で散々ヘンリー・フォード2世のことを罵倒していましたが、気がつけば自分自身が「企業を私物化した」元上司と同じ事をクライスラーでしていた訳です。
今、挫折の渦中におられる方はもちろんの事、逆に自分の今の仕事があまりに上手くいって有頂天になっている人にも現在の繁栄が今後も続くはずが無いという自戒の意味を込めて読んでもらいたい本です。
アイアコッカ氏は「闘魂の経営」の中で(潰れかけた企業の再建は)「もう1回でこりごりだ」と書いていましたが、このミラー氏にしても先のグリンワルド氏にしろ、クライスラー再建での経験から企業再建こそが我が行く道と選択する後輩もまたいる訳ですね。
意外や意外。感動作です
★★★★★
骨太のお堅い話かと思いきや、これが違うので驚きました。
冒頭を読んでビックリです。お勉強本だと思って手に取ったのに、感動作でした。
物語は奥さんとのパートナーシップのお話から始まります。
著者は著名な「企業の再建人」。アメリカで、倒産の危機に瀕した有名企業から請われて、企業に乗り込み、片っぱしから再建していきます。
奥さんは、企業の役員に就く、というわけではなく、あくまで再建人本人が、自宅に帰ってからのよき相談相手。全米を飛び回っていたのですから、二人の関係は想像するに難くありません。
企業を再建のため、ある企業に行ったときに、奥さんが亡くなる場面から始まります。
本当に、冒頭を読んだだけで、ジンワリと涙が浮かんでしまいました。
回想録ですがその回想録自体が、アメリカの企業の歴史そのもの。世間を賑わす「ビック3問題」の根源の理由もわかります。
ですが、ただそれだけではない。この本。感動作に仕上がっているのは、恐らく、著者が不惜身命の想いで、人助けをしてきたからではないでしょうか。
一度、読んでみる価値あり、です。
不況克服の知恵が満載!
★★★★★
日本にはまだ少ない、企業再建(ターナラウンド)を専門とするCEOの回想録。
何より、危機に瀕した企業の再建に挑むリーダーとしての哲学がすばらしい。正直さ、誠実さ、互いを尊重する心……。本気でそれらを如何なく発揮し成果を出してきた著者は、今どき珍しい高潔さで読み手をひきつけます。
米ビッグスリー苦境のディープな原因、ひいては目指すべきは日本の自動車メーカー(トヨタやホンダ)だと早い時期から提唱してきた著者の論も、すごい説得力。
赤字に転んだトヨタの社員にも、エールとして伝えたいほどです。
そして、こんなビッグな再建を手がけてきた著者が、何かと奥さんに相談する姿にも、びっくり。
経営のプロではなくても、人間洞察力に長けた妻の目を信頼していたんですね。でも、その愛する妻が、労働争議の最中に亡くなり……ううっ
映画を見ているような展開も、見逃せない。
ファイナンスのキャリアを考えるためのロール・モデル
★★★★★
ハロルド・ジェニーンの自伝「プロフェッショナル・マネジャー」は、
コントローラという仕事とキャリアを考える上での最高の1冊でした。
フォードとクライスラーでコントローラとしてのキャリアを
築いた著者は、自分にとってジェニーンに並ぶ、貴重なロールモデルです。
クライスラーのCFOとして、CEOのアイアコッカと対峙する様は
非常に興味深い。
クライスラー再建を振り返っての言葉、「私はあの狂乱の中で、
企業の再建という仕事について大切なことを学んでいたのだ。
中でもいちばん大切な教えは、最善の解決にいたるためには、
誠実な態度を貫き通さなければならないということだろう。
それは、つまり、正直であること、そしてできない約束は
しないということだ。」は本当に参考になります。