テレビ局は大丈夫かい?
★★★★☆
「今後、テレビ業界は厳しい冬の時代に入るだろう。インターネットがここまで普及すれば、これまでのやり方ではおそらくテレビ局は生き残れないよな。」などと、ここ数年、私は漠然と考えていた。
同様のことを考えていた人は多いと思う。インターネットの普及のみならず、テレビ局自体、番組の質の低下、とりわけ、生活情報番組でのねつ造事件や、内輪ネタっぽいバラエティー番組や、過去の作品の焼直しのようなドラマを見れば、テレビ局の将来は暗いのではないだろうかと思ってみてもおかしくない。
本書は、制作現場におけるテレビ局正社員とそれ以外の者との大きな給与格差、テレビ局とその下受け・孫請会社との力関係(ねつ造事件の背景事情として本書では触れている)、報道番組に実は費用がかなり掛っていること(「もし事業仕分けがあったら、真っ先に切られるかも」などと、私は笑えない冗談を思い浮かべた)、テレビ局の収益構造などについて、業界の人間だという著者が内情を暴露したというもの。
格差社会を否定的に報道するテレビ業界が、格差社会を体現している業界であるというのは洒落にならないことだし、ねつ造事件の頻発が、テレビ局と下請け会社との力関係による構造的要因の影響を受けているとすれば、その歪みをなくさなければならない。また、テレビ番組にスポンサーの意向が、必要以上に反映されることがあれば、また、テレビ局自体の利益を上げるために番組が利用されたら、そりゃ公共の電波の私物化でしょう、などと思いつつ読み進めた(余談になるが、ねつ造事件については制作サイドに一番の責任があるのは当然だが、出演者のオーバーリアクション・迎合のコメントには辟易としたものである。また、「人間の血液型と行動パターンに関係がある」といった内容の放送もあったと思うが、視聴者を舐めてないか!などと思ったものである)。
本書の内容は、おおむね、信憑性があるのではないかと私は思った。なぜかといえば、推測による記述については、それと分かる表現を用いているなど、事実関係の取扱いに注意を払っているなと感じられるからである。かといって、全面的に信用するつもりはないが。
この本を読んで感じたのは、やはり、テレビ業界の将来は暗いなということである。これまでは、テレビ局に正社員として入社すれば、他の業界と比べ破格ともいえる待遇を受けてきたことだろう。しかし、これから先はテレビ業界にリストラの嵐が吹き荒ぶのではなかろうか。そのときに、下請け・孫請会社の人たちにばかりシワ寄せが行くようでは、テレビ業界自体が壊滅状態になりかねない。テレビ局は、とりわけ、在京キー局は自浄作用を発揮して、リストラ(別に人員削減に限らない。要は、純粋に番組制作に手間と時間とお金をかける仕組みの再構築)を進めなければ、テレビ業界はインターネットに駆逐される以前に、自壊するのではなかろうか。
一昨年の末に、とある著名な経済学者が「資本主義はなぜ自壊したのか」という本を出版して話題になったが、テレビ業界関係者から「テレビ業界はなぜ自壊したのか」というタイトルの本が出版されるようなことにならないよう、切に願う。
とにもかくにも、いろいろな意味でテレビ業界の裏側に興味が持てる面白い本であった。テレビ業界の再生を期待したい。
日本社会の負の縮図
★★★★☆
本書では、TV局正社員と下請け制作会社スタッフの格差、パワハラとも言えるやらせの無言の強要、
劣悪な労働環境、視聴率という利益至上主義、スポンサー(顧客)の越権、地デジ化による税金の無駄遣い、
といった内容が分かり易く描かれている。
これを読んだ感想は、日本社会が抱える多くの社会問題を、TV業界自体が内包していることが良く分かる。
一種の暴露本だが、業界をより良く発展させたいと願う、著者の真摯な姿勢を感じ、好感が持てる。
TVを見ていて、過剰演出のワイドショーやタレントの自画自賛番組、などなど、
こういった類の番組に違和感を感じていた私は、本書でその違和感なんであるか考察出来た。
TV局が視聴者ではなく、視聴率しか見ていないというのが良く分かる。
自らの業界でこれだけの社会問題を内包しているのに、自浄作用が全く感じられないことに恐怖すら感じる。
TVを通じて、コメンテーターが正義感に燃え正論を吐いている姿は、子供のわがままとなんら変わらないと思ってしまう。
読んでいて不思議になったのだが、地デジは双方向のシステムでは無かったかな?
視聴率調査などは、その双方向のシステムを使えば簡単に出来ると思うのだが。。。
技術的に無理なことなのか?みんな分かっているけど黙っているのか?どっちだろうか?
テレビ局の裏側のごく一部だが,格差問題などをかいまみることができる
★★★☆☆
テレビ局の裏側にはさまざまな話題があるはずだが,この本の焦点はおもにテレビ局の正社員とそのまわりにいるひとびととの格差にあてられている. 正社員はろくな仕事をしなくても他の業界よりはるかにたかい給料をもらっているが,そのまわりにいる多数の零細企業のひとはその数分の一しかもらっていない.
有名タレントを起用すると制作費の半分をギャラとしてもっていかれるような環境では,この格差はそれほどめだたないということなのかもしれない. テレビ局の裏側のごく一部だとはおもうが,この本でそれをかいまみることができる.
「驚くような情報」はないけれど、真摯な一冊です
★★★★☆
タイトルから、非常に露悪的な本を想像していたが、さにあらず。
現場で真摯にテレビと取り組んでいるテレビマンの、読みやすくも真面目な「内部告発」といった内容です。
もっとも、本書で取り上げられている諸問題、たとえば、
・やらせ、捏造
・視聴率重視の弊害
・下請けいじめ
の裏側などについては、それほど目新しくもなく、取り立てて驚くような情報はなかった。
各章の冒頭にある現場の「再現」などはリアルで面白かったが、それ以外の箇所については、情報的にはあまり物足りないのも事実だった。
そういった意味ではあまり玄人受けしない本かもしれませんが、知識の整理や概要の把握などには使える一冊かと思います。
ここまで書いて大丈夫なの?
★★★★☆
書名のとおり、テレビの裏側がよーくわかりました。
民放も報道が必須であるがその維持費は極めてかさむこと、スタジオトークで展開される番組は低予算であること、出演者が豪華な報道番組が短命なわけ・・・。
中には、「このヒト、こんなことまで書いちゃって、今後、だいじょうぶなのかな」と、心配してしまうことまで書かれていますが、ホントはテレビを愛しているのでしょうね。そんな想いが伝わってきます。
巨大かつ独善的かつ身勝手なメディアの実態がよくわかる本です。