面白いのは、本書でしばしばフロイトが参照されていることです。ローレンツが様々な動物たちを観察して到達した結論がフロイトに似ている、というのは大変興味深いことだと思います。人間の攻撃本能は取り除くことができない、とか、まして、攻撃欲を持たない動物には友情を生み出す能力がない、といった意見に衝撃を覚える人がいるかもしれませんが、フロイトの観察によっても似たようなことが言われています(フロイトによれば<死の本能>が外へ向かえば破壊行動になり、内に向かえば超自我=良心の形成に寄与します)。本書に登場する愛らしい動物たち以上に、なんとも不可解な<人間>のほうに興味を持たれた人には、「文化への不満」(フロイト著作集3所収)も読んでみることをお勧めします。