やるせない読後感にいざなう、死産・流産の胎児への影響調査
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調査自体、される側としては当時はやるせなかったであろうし、水銀汚染が世界規模で継続中であることもやるせない。
中でも環境省が、國際化学物質の世界保健機関作成の環境基準を厳しくさせないために、妊娠・胎児への影響に関するデータを今まで全く調査せず放置していたにもかかわらず、何とか反論すべく調査予算を税金から捻出して立ち上げ、それを報道しようとした熊本日日新聞の山口記者に脅しをかけ、記事になってしまうと山口記者を出入り禁止にし、官僚自身らは出世していったのを知るに、国というものを疑わざるをえないことが最もやるせない。
これは、佐藤栄作首相とニクソン米大統領沖縄密約事件を毎日新聞の西山記者が記事にした件を、記者と情報提供者である外務省の女性事務官とのスキャンダルに矮小化した事件に重なって見える。
望みの一つとしては、神奈川学園高校の水俣フィールドワーク修学旅行で、「いのちのリレー」を生徒たちが受け止め、受け継いでいっている事や、胎児性水俣病患者と他の障がいをもつ人々が、共に作業所「ほっとはうす」で社会と関わりあいをもちながら働いている事だ。
生まれなかったり、早くに死んでしまった子らの為にも「あがん苦しまんなんなら、うちん子は死んで幸せだったばい」と言わせないで済む社会でなければならないのだが、妊娠への魚摂取による水銀値の注意がなされているとは言えない現状で、それはかなわぬ望みなのだろうか。