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現勢化―哲学という使命

価格: ¥1,890
カテゴリ: 単行本
ブランド: 新評論
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私生活のごく秘められた部分からの哲学 ★★★★★
この本は、と言うよりも、たぶんどの本を通しても、スティグレールは、
人間が哲学する理由から、人間が社会的存在であることの理由まで、
一貫して「自己を持つために他者を必要としている」視点から説明しています。
彼はフランス人ですから、フランス文化の影響を色濃く持つわけですが、
その文化なしでは自分足り得ない個人が、実はフランス文化を担っている。
自分なしでは社会は存在しないし、社会なしでは自分は存在しない、
そうした相互依存ゆえに、人はどのようにでも社会を作っていくのが基本です。

ところが現代社会では、この相互依存性はどこかへ見失われてしまい、
自分とは無関係に思われるグローバル商品が、価値の代弁をしてしまう。
そうすると人は、「われわれ」の主体を見失ってしまい、自分までも見失う。
自分とは関係ない誰かが作った価値観で生きる「私」は、常に社会から疎外され、
無力感や、自分が何者かわからない虚無感に襲われてしまうのです。
現代に生きる多くの人の不安は、こうした地平から沸き起こるものでしょう。

この現実を受け入れた上で、それではどうすれば「われわれ」を取り戻せるのか?
スティグレールは、私生活のごく秘められた部分から生成するものに注目します。
「人は私生活のごく秘められた部分において、どのように哲学者のなるのか」
これが、この本の原型となる講演に与えられた設問だったようですが、
彼はそこから、個人的なことは秘められているから個人を形成すると気付きます。
誰にも暴かれていないけれど確かにある何か、まだ見えないものが彼を形成する、
その欠落こそが、未だ未完の彼の全容をあらわすものなのです。