目を通しはじめて困惑した。書かれてあることが分かるような分からないような、そんな感じなのだ。理念について多くのページを割かれているが、なにしろ具体例がほとんど書かれていない。だからマエカワが具体的にどんなふうにこの理念を実践しているのか、さっぱり実感が得られない。マエカワの社員なら思い当たる節もあるのかもしれないが、一般読者がいきなり読んで分かるようなものではない。著者自身が理解するのではなく感じて欲しいと断っているくらいだから、著者もその辺は自覚しているらしい。
ただ、なにか非常に重要なことが書かれてあるという直感が働き、ページを行きつ戻りつしながら読み進んだ。そして、ここに書かれてあることは、まったく初めてのことではない、よく知っている何かである、という感じがしてしょうがなかった。読み終わっても、十分納得できたとは言い難いが、しかし非常に感慨深く、はたして自分の所属している会社や部署、さらに自分の人生に適用可能か、考え込んでしまった。(はたして上場企業に適用は可能なのだろうか?)
なにしろ具体例がないので、本を読んでいる途中で、前川製作所のサイトにアクセスして、どんな製品を作っている会社なのか調べてみた。するとそこには、新しい技術の開発や導入の事例がたくさん載っていた。それを見ると、技術の完成までに10年ぐらいかかったという事例がいくつもあり、驚かされる。また社長の対談などの記事も豊富に載っている。さながらサイト自体がマエカワの理念の発信基地になっているかのようで、この本と合わせてサイトに訪れることをお勧めする。