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在日 ふたつの「祖国」への思い (講談社+α新書)

価格: ¥840
カテゴリ: 新書
ブランド: 講談社
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将来を構想すべき今の時期に敢えて出す必要のない本 ★☆☆☆☆
この人の「悩む力」を読んで感銘を受けたのでこの本を手に取ったが、結論をひとことで言えば、「失望した」。帯に「筑紫哲也NEWS23、朝日新聞などメディアに登場!!」と書いてある通り、所詮は朝日新聞的な、自虐史観に囚われた史観であり、被害者意識に彩られた物言いが読むにたえない。

何が僕を失望させたか?

1.タイトルからして「祖国」と括弧付きであるように、本文にも括弧付きの言葉が多すぎるのだ。「妄言」「帰還」「善意」、日韓協定の「妥結」などなど。括弧付きということは、いわゆる、という意味であり、カンさんがその言葉遣いに納得していないことを意味する。学者ともあろうものが、自分が納得していない言葉で文章を埋めてよいのだろうか?自分が「違う」と思うのなら、自分の言葉に言い換えればいいではないか。常に自分を現場におかず、すべてから距離を置いている点が卑怯だと思う。

2.ここに書かれていることは、米国、日本、北朝鮮のせいで韓国は塗炭の苦しみを味わいつづけている、というよくある被害者意識。韓国という国、或いは韓国人としての主体性をもっているなら、すべてを被害者意識に還元するのは自己矛盾であろう。米国が、日本が強制的にああしなければ、韓国は自生的によりよい道を辿ったであろう、という可能性の夢想でしかない。学者たるもの、もっと徹底的に資料を集め、資料を読み込み、その上で「これしかない」という自分の意見を言うべきだ。可能性を言うだけならば誰でも何でも言える。

3.国家の機密文書(当時)がその後公開されて、わかった新事実を基にしている部分は少なく、やたらと和田春樹氏の本からの引用が多い。金完ソップ氏の「親日派のための弁明」と比べて情報源の偏りが大きい。 自分が思っていることをより説得力強く言いたいならば、「親日派のための弁明」に対してもいちいち論駁できるくらいでないといけない。この本は2005年の出版、「親日派」は2002年には出版されているので読めたはずなのに、参考文献にも挙がっていない。学者として不勉強だと思う。

4.カンさんが在日韓国人として、多くの苦難にさらされたアポジ、オモニを見てきて、その人たちへの鎮魂歌としてこの本を書いたのであろうことは察しがつくが、これからの日韓、そして北朝鮮も含めた将来を構想するとき、朝日新聞的な史観を更に補強して何になるのだろうか?「親日派」という本が、高校時代には反日運動をしていた、カンさんよりも10才以上若い韓国人によって書かれている時代に、その本に真っ向から挑むことなく、夢見がちな言説をするのは、いかにも甘いといわざるを得ない。世界はもっと冷徹なパワーによって動いている。

もちろん僕はカンさんを全否定しようとは思わない。子供時代に、苦しみ悩むアボジ、オモニを見てきて、その人たちへのポエティックな鎮魂歌を書きたいという気持ちはいかにも人間らしく、その優しさが僕は好きだが、もういい大人、しかも東大教授でもある人が子供のようなことを書いていいわけでは断じてない。

在日として悩みつづけた人だからこそ、日本と韓国と複眼的に見て新しい視点を提示してほしかった。
恨(ハン)の源流を垣間見られるが、素朴に疑問が・・・ ★★☆☆☆
この人の意見って、本当に在日の総意または主を占める意見なのだろうか、
という疑問が素朴に湧いた。
陳舜臣の「青雲の軸」あたりと比較して頂くとよくわかるが、冷静な物言いの
割りに自分たちを相対的に見る視点がとても薄いのだ。
いろいろ論理を言ってはいるのだが、国籍のせいで自分の能力を認めなかった
日本と言う国が恨めしい、憎いぞ畜生以上のことが書けていない・・・。
在日のナイーヴな現実に気が立っていることは主張しても、その相手である
日本人の複雑な感情に対する理解と歩み寄りが全くない結果、
思想面の均衡が取れず、安易に韓国(の最下層的なナショナリズム)に
擦り寄る内容になってしまっている。

だが、正直、冷静な本国の韓国人であればあるほど、韓国人の方でも
耳を傾ける人は少ないのではないか。意見や論説が10年以上前の
韓国ナショナリズムそのままで、韓国側からも古く進歩がないからである。
あまり賢く冷静な層に向けて意見を発しているとは思えないところが
どうも・・・。




2つの祖国ではなく1つの祖国 ★★★☆☆
姜尚中氏の論は、コリアンへの郷愁で貫かれている。それは非難されることではない。

しかし、次の点を指摘したい。

戦後の朝鮮半島の悪しき問題を、偏った歴史認識にその原因を求めている。即ち、日本の植民地支配は悪であり、そこに全ての問題の原因があるかのごとく論じている。
はたしてそうだろうか。

○ 日本とタイ以外のアジア諸国が欧米列強の植民地にされたという、世界史的な歴史に対する考察が見られない。

○ 植民地支配は本当に過酷だったのか。植民地になる前の人々の生活よりも植民地時代のほうが豊かに発展したのではないか。

○ 第2次大戦で戦場でなかった朝鮮半島と5百万人が死んだ朝鮮戦争と一体どちらが人々の心に傷を残したのだろうか。姜尚中氏は、その朝鮮戦争の原因を米国及び日本との歴史問題にもっていこうとする。

○ 異なる国家、民族で同じ歴史認識を持つのは困難であろう。姜尚中氏が朝鮮半島の諸問題を日本米国に原因を求めようとするのは、そこが彼の祖国だからである。そして、旧宗主国の中国を批判しようとしない。

私は、筆者の論がおかしいとは思っていない。
ただただ、筆者の朝鮮民族に対する深い愛を感じるのみである。
痛烈なアメリカ批判のセリフ ★★★★☆
姜氏はあちこちでナショナリズム批判を繰り広げているが、わたくしには逆に姜氏は日本と朝鮮半島を共に愛する「愛国者」であり「ナショナリスト」であるようにしか見えない。姜氏が折りに触れて提案している、朝鮮半島と日本を核にした集団的安全保障ならびに経済圏樹立の提案は、短期間では現実困難であるものの、日本の安全保障を考える上でもわたくしには現実的な提案であるように思われる。
 また、北朝鮮体制を「崩壊」させるための、と言ってしまうと姜氏の真意には反することになるが、朝鮮半島統一のための具体的なプロセスの提案にも好感が持てる。統一は経済的には日本にとってプラスの面も考えられ(市場が拡大するわけだから)軍事的には安全度が高まることも言うまでもないからである。
 この本で一番面白かったのは、「平和をカネで買って何が悪い」と言い切ったその発言である。ただし、これを戦後日本に適用してしまってはいけないだろう。「正義があって平和がないよりは正義はなくとも平和であるほうがいい」とは、なんと適切なアメリカへの批判であろう。六カ国協議の結果がわかってしまったこんにちでも、まだこの著作の価値は落ちないと思われる。
800円の新書版とは思えないほど豊かな内容 ★★★★★
本書の前半(1~3章)は戦後(解放後)の日本と韓国、朝鮮のねじれた関係の歴史、後半(4章)は米国をも含めた視野の広い具体的な政策提言となっている。再び朝鮮半島を、或いは日本に惨禍を繰り返したくないという著者の祈りにも似た思いが読み取れる。特に4章に展開された東北アジア共同体へのロード・マップはよくねられている。現在の日本の外交で有効と言える水準のものは少ないが、そのひとつと言って良い。この「東北アジア共同体」が実現されれば、日本人も真に歴史との接続が可能となるだろう。それにしても、巻末資料の数字には驚いた。北朝鮮と韓国の間にまさかこれほどの人の往来があるとは!しかもそれは年々増えている。この本はお涙頂戴でも単なる歴史の概説書でもない。まさに「思い」であり、具体的なヴィジョンを含んだ優れた思想の本だ。