ここにレボリューションが記録されている。1969年に制作された『Bitches Brew』が与えた衝撃は今も残っている。 サウンド、制作方法、カバー、そしてLP2枚分の長さというすべてで、ジャズの演奏は一度きりだということを伝えているアルバムだ。 スタジオは3日間、怒り、混乱、そして活気に包まれ、音楽、歌詞、グルーブに感情を注いだ結果、この素晴らしいアルバムが生まれた。ここでのマイルス・デイビスは、ジャズとロックを融合させた音楽をただ演奏しているのではなく、即興やスタジオでの演奏について新しい方法を考えていた。このリイシュー盤の2枚組CD(実際にはオリジナルに1曲プラスされている。4枚組のComplete Bitches Brew boxはためらってしまうファンにとってはちょうどいい)では、音質が向上している。インストゥルメンタルが明るく新しく聴こえ、オリジナル盤の落ち着いたエネルギーがリフレッシュされたようだ。ジョー・ザヴィヌルと ベニー・モウピンも素晴らしい。ボーナス・トラックの『Feio』はウェイン・ショーターの作曲で、5ヵ月後に録音されたものだが、『Bitches Brew』の目玉であり、その後の彼のWeather Reportでの活躍を予見するものであった。これは十分に聴く価値がある。John F. Szwed
音が少し違う
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最近リマスター盤やリリマスター盤、コンプリート盤、DVD付と手を替え品を換えリリースされているマイルスのビッチズブルー。本盤はCDが世に出回るようになってから比較的早い時代(1990年)に出たもの。いってみれば”古くさい”CDである。
ジャケットの上欄外には"Digitally Remastered Directly The From Original Analog Tapes"とあり、CDスリーブをめくると"Digital Master Prepared By Teo Macero"とある。オリジナルLPのプロデューサーである男の名を冠したこのCD今はもう廃盤のようであるが、音質が幾分というかかなり最新版と異なることに気がついた。
音に細工がされていないというかとてもレアな音触りなのである。それぞれの楽器の音がそのままに聴けるというか、レコーディングスタジオの片隅にいるような臨場感がある。大きな音で綺麗にミックスされた最新版は大音量できくと、どこか音に飲み込まれてしまうような埋没感がある。しかしながら、本盤ではこのビッグバンド?の音を一つ高いところから捉えていて全体像がみえる。
確かに各楽器の音は明確でないところもあるが、こっちの方がLPっぽい音で聴き易い。ゆったりと安らかなビッチズブルーというところである。
ロスト・クインテット、現る!
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もちろん、DVDについてのみのレビュー。ウエザー・リポートの『モントルー1976』並みの快挙と言っていい。このビデオについては海賊盤もあるし、『ワイト島』で出現が預言されていた。しかしこうして出されるとオフィシャルの有難味、素晴らしい画質・音質なのだから文句のつけようがない。海賊盤はそのままゴミ箱行きである。
マイルスがスタジオとライブをはっきり分けて考えていたのは知られている通りなので、いってみれば本作は単なる別タイトルのカップリングに過ぎない。同じ曲でも全然位相の違う演奏である。しかし何よりも重要なのはいわゆる「ロスト・クインテット」の記録がまたひとつ増加したことである。『1969MILES』は凄い演奏だが明らかにクインテットとしては中庸な演奏であった。このビデオは爆発とまではいかないが相当密度の濃い、深入りした演奏である。ディジョネットの細かいシンバル・ワークが判ると、演奏はとてもしまってくる。チックのローズの音も時折輝いて聞こえる。そしてフロントの2人。唇の具合か少々荒々しいところもあるが、存分に吹きまくっている。いい!
付言すれば、晩年に至るまでのマイルスのビデオと比べても、ここまでクリアで生々しいものはない。演奏そのものは既にエレクトリックな思想であってステージが変わってしまっているが、素の演奏として5人そのままの音が楽しめるという意味でも(ほとんどエフェクトなし)貴重なものだと言える。
世界の遺産という堂々たる自信に満ちた本DVDは、もちろんリージョン・フリーである。観たことない人は円高にかこつけて即購入すべし、である。CDについては、今さら評価する必要なし。
DVD目当てでも十分楽しめます!
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これを買おうと思う方は、恐らく「ビッチズ・ブリュー コンプリートレコーディングス」などもお持ちだと思います。一歩譲っても、2枚組のCDかLPをお持ちでしょう。それでも3枚目のDVDだけでも見て損はありません。コペンハーゲンでの1969年11月4日のデンマークツアーの映像です。スタジオ録音の大人数のメンバーと異なり、チック・コリア、デイブ・ホランド、ジャック・デ・ジョネットのリズム隊にウェイン・ショーターとマイルスのみのわずか5人での演奏です。約70分の演奏は、これだけの少人数ですので、オリジナルのスタジオ録音を大きく編曲していますので、ほとんどフリーです。一応タイトルはついていますが、7曲が切れ間無く続くので、聴いているひとによっては、「今演奏している曲は何だろう?」と思うでしょう。しかし、これがインプロヴィゼイションの面白さです。マイルスも曲のヒントになるテーマを少し吹いたら、あとはインプロです。オリジナルにかなり近いのは、「サンクチュアリー」です。マイルスとショーターがユニゾンでテーマを吹く場面は、ショーターのサックスごしにマイルスの演奏が映し出され、単純に「格好いい!」と思います。最後の「イッツ・アバウト・ザッツ・タイム」は20分近い演奏の殆どがリズム隊のインプロです。オリジナルでは、トニー・ウィリアムスはリズム・マシーンに徹していたのに対してジャックはその片鱗も見せません。最後の4分でようやくマイルスがテーマを吹き始めるとリズム隊もオリジナルのような演奏になります。メンバーも非常に若い!何せ40年前ですから。CDも「スパニッシュ・キー」と「ジョン・マクラフリン」はこれまで未発表の演奏で、「・・・コンプリート・・」をお持ちでも買う意義はあります。ジャズを変えた名作品として、貴方も購入してみませんか?きっとその価値は高いですよ。
映像でもビッチェズ・ブリュー
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DVD目当てで買った当方ですが、カッコいいその一言につきます。
1969年11月4日、コベンハーゲンでの未発表ライヴ映像と書かれています。
様々なアングルで映しだされる鮮明な映像、その場の空気が伝わってきそうな
メンバーが織り成す音の洪水に目も耳も釘付けとなってしまいました。
映像でもビッチェズ・ブリューを楽しむ事ができます。
「プログレッシブ・ジャズロック」の誕生。
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一般的な60年代〜70年代の「ジャズ」ということでこのアルバムを聞くと、誰でも「拒絶反応」を起こすことでしょう。
このアルバムが録音されたのは「1969年」であり、「ロック・ミュージック」で考えると、ちょうど「プログレッシブ・ロック」が台頭してきた時期とも重なるわけです。
音楽に対する興味が「貪欲」なマイルスが、そういうロックのムーブメントに敏感でないはずがありません。
マイルスは、あらゆる音楽を個人的にも聞いていたことと思います。
そして、本作『Bitches Brew』ですが、いわゆる「エレクトリックマイルス」の記念碑的作品として、現代でもその評価は高くなる一方であり、アルバムリリース時の「リスナーの困惑」は、今では懐かしいと思えるほどに、このマイルスの演奏は受け入れられてきました。
「エレクトリック期」が駄目な人は、このアルバムに対しても未だに拒否反応を示している人もいますが、ジャズ史の流れで考えていけば、確かに特殊なスタイルであるだけに、好みが分かれることも当然と、私には理解できます。
しかし、マイルスの音楽を亡くなるまでのいスパンで見ていった時に、「前衛音楽」のような「不協和音の嵐」には決していかなかったという点が注目されます。
部分的には確かに「不協和音」も混じりますが、トータルとしては、「音楽の体裁」をマイルスなりに維持し、その範囲の中で「実験」をしていて、決して「音楽を解体」させるようなムーブメントを、マイルスは行ないませんでした。
この点は非常に重要であり、あくまでも「音楽としてのダイナミズムの探求」という結果としての「エレクトリック期」であったように、私は思っています。
そういう観点から、私は本作『Bitches Brew』を、「プログレッシブ・ジャズロックの誕生」という大きな、独自の枠組みで考えているのですが、それは全くピントはずれということでは無いように、私には思えます。
どちらにしても、「1969年」という時代にここまでジャズに「革新」を起こした人は、マイルス以外にはいないでしょう・・・名盤ですね。