何度も読みたい写真集
★★★★☆
写真集なのか、デザインの作品集なのか。
どちらともいえない、ジャンルに当てはまらない一冊です。
写真集だろう、と思って購入したのですが、
深澤さんの自身のデザインに対する文章が予想以上に多く、
ぐっと読み込んでしまいました。
難しい言葉はほとんどなく、ある種のエッセイのようで、
深澤さんのノートのメモを読んでいるような気分になります。
とはいえ、自分を取り巻くモノの見方を変えてくれるような
はっとさせる言葉。
優れたプロダクトデザイナーは、文章も優れている
と、改めて認識させられました。
写真は独自の世界をひた走っている印象。
個人的には、
・プラスマイナスゼロの扇風機
・auの携帯電話(INFOBAR2)
・洗面器のバスタブ
が心に残っています。
特に、扇風機はなぜか人格をもっているように見えて仕方ありません。
難点を挙げると、帯が短くて外れやすいところ。
保管用にもう1冊買ったほうがいいということなのでしょうか(苦笑)
飾っておくより、近くに置いて読み返したい1冊です。
いつまでも本棚のベストの場所においておきたい一冊
★★★★★
プロダクトデザイナーの深澤直人氏の作品を、写真家の藤井保氏が撮るというコンセプトの作品集。藤井氏による80枚以上の写真と、それぞれの写真に写ったプロダクトに対する深澤氏の文章が紹介されています。
その深澤氏のコメントがいい!彼の「デザイン」に対する考え方、また、彼にとってデザインする上で「輪郭」というものが非常に重要なキーワードとなることが、ひとつひとつの作品を通じて理解できてくる。「深澤直人ってほんとにまじめなデザイナーなんだなぁ」ということが伝わってきます。
住宅雑誌「モダンリビング」の連載をまとめた形で出された本だが、その連載が大好きだった私にとって、今回の作品集化はとても嬉しいことでした。
また、今21_21DESIGN SIGHTで同時開催されている展覧会も見に行きましたが、この作品集とは違った楽しみを味わえます。展覧会場に入るとすぐに目に入るのは、作品集の最初のページを飾るミラノのドゥモオの大きな写真。(そういえばなんでドゥモオなんだろう?)
中へ進むと作品集で紹介された写真と、その横に深澤氏のプロダクトたち。「この写真に写っているものの正体はこれだったんだぁ!」という驚きも。 表紙のB&Bをはじめ、座ったり触ったりできる作品があるのも嬉しい限り。写真の横に、実際の作品があると、改めてこの写真集は深澤氏と藤井氏のコラボレート作品集なのだたぁと思いました。デザインの「輪郭」というものを重要視する深澤氏の作品ひとつひとつと、(深澤氏の意図に沿うのか沿わないのか、)深澤氏にも見えていないのかもしれない「輪郭」を、藤井氏が「写真」で切り取るという、まさに二人による作品集です。
トータルで、この作品集には大満足!いつまでも本棚のベストの場所においておきたい一冊です。
派手ではないが、しみじみいいなあ、と思う本
★★★★☆
まず、手にとったときの紙の質感に驚いた。すごくいい紙・・・しっとりしていて、
少しざらっとしていて、こういう紙の質感が好き。
藤井氏のふわっとした写真とよく合っていると思う。
何が写っているのかわからないくらい、接写したものやぼやけたものもある。
最初は戸惑ったが、見ているうちに、その世界に引き込まれた。
ただのプロダクトの写真ではなく、深澤氏の意図を撮った写真だと思う。
そこに添えられた深澤氏の文章は、とてもわかりやすく簡潔。
少しあっけないくらいだが、読んでいるとどんどん深くなってくる。
ひと言ひと言が沁みてくる。言葉にぶれがない。
最後の対談がまたいい。これだけでも読む価値がある。
ここで、「見えていない輪郭」とは・・・というのが、種明かしされる感じ。
ぱっと見は派手ではないが、
使っているとしみじみいいなあ、と思う、深澤氏のプロダクトのような本だ。
短絡的にならないように注意か?
★★☆☆☆
展覧会と同時発売した本。展覧会もみたが、もうすこしプロダクトデザイナーのものづくりの過程もしりたかった。
デザインは意匠と訳されるが、テクノロジーの要素がなくては、機能美を満たせない。デザイナーズを買いたくない理由はこのあたりにあるのだが、
さらに、デザインは人が使ってなんぼ。椅子が山や岩の上にあってただ、輪郭だけを際立たせる写真などは、本当のデザインを伝えるのか?
環境、人権が叫ばれる21世紀にまだまだ20世紀的デザインの本であるところが気になる。
それは目に見えない。
★★★★☆
プロダクトの写真を撮る時に
パッケージも何もはがしてしまい
レントゲン写真のようなものを制作した写真家
それがそこにあってもいったい何をするものなのか
わからないが(まるで置物のよう)
いったんそこから霧が噴きでると、もう加湿器というのは
その形でなくてはならないと思わせるようなプロダクツデザイナー
両者が組んだ写真集なので、一枚一枚の掲載写真を見ていても
よく分からないことが多い。見るものはいったん途方に暮れる
そこで、手に取ったこの本をぱらぱらとめくっていたら、
ページとページの間から拡がりと深みのある色のハーモニーが
浮かび上がってきて驚いた
それはこの写真集の制作者たちが意図していない
写真集自体の「見えない輪郭」だし「見えない色彩」
ここから再度、各ページに戻って見直してみると
デザイナーが書いているコメントに集中できた
携帯電話
「こんなに厚いと4年前のデザインが
100年前のものに思えてくる
手でいじくりまわされてできてくるかたちは
四角い飴が口の中で溶けたような感じ」
バッグ
「SIWAの製品は使いまわしの紙袋のかたちが原形になっている」
加湿器
「溜まった量のある水ではなく、一滴の水のイメージがあった」
壁掛け式CDプレーヤー
「下北沢の古道具屋の壁に無造作に掛かっていそうな感じ」
腕時計
「時計はそぎ落とすところがもうないと思いながら、
まさか文字盤の目盛りを外したらどうだろうなどと考えていたら
12角形のガラスにすることを思いついた」
アームチェア
「だらしない座り方が似合うような椅子がいい」
チェア
「椅子というものが生まれる前から座るという行為はあった」
雑誌「hinism」で開花した副田高行の繊細でミニマムなアートディレクションも
全体の仕上がり感に貢献している