ナイフではなく、一冊の詩集を
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この、文庫本サイズの詩集のシリーズの三巻目、前二巻にもとりどりの良い詩がまとめられていましたが、この巻にも少し懐かしい詩(高村光太郎の「レモン哀歌」、中原中也の「月夜の浜辺」など)から、江國香織、天野忠など比較的新しい作品まで、ほどよく集められています。
編者は詩を紹介する本、茨木のり子「詩のこころを読む」の言葉に励まされてこのシリーズの二巻を編み、この三巻につづいたとのこと。そのせいか、このシリーズには「詩のこころを読む」と重複する詩も多い感じがします。そちらを読んでいると新しい発見は少し減るかもしれません。でも、永瀬清子「諸国の天女」、石垣りん「くらし」など、詩だけでもいつも近くに置いておきたくてこの巻を購入してしまいました。
ちょっと値段は高いけれど、しっかりした作りなので長くそばに置いておけそうです。
「子どもたち、ポケットにしのばせるのは、ナイフではなく、一冊の詩集であってほしい。」本の帯に、編者の前書きからこんな言葉がひかれています。上等の言葉は、決して美しくはなくても、心の深いところに届き心を解き放ってくれる力があります。心には自分を守るために他人を攻撃する言葉もなくてはいけないのでしょうけれど、こんな詩の一つも心の部屋に飾っておいたら傷つけあうことも少しは減るかもしれません。
心の部屋に飾っておきたい詩、ポケットに入れておきたい詩がこの中に一つぐらい、きっとあると思います。