相続は難しい....(考えたくないかも)
★★★★★
まず.相続制度の歴史的背景と相続の現実について技術的面も含めて,的確に丁寧に述べられているので,著者の今までの著作よりも読み応えがあると言うか重い...しかしこれが大切.基本的事項で失敗しないようにという親切心の現われと思う.
財産のみでなく,それを生み出すノウハウを相続すべきと言う主張も全く同感である.
著者の開発した裏技(賢い税理士がクライアントのみに伝授しているかもしれない)も不動産を知り尽くした方ならではと感銘した.現実に裏技2を使った方がいるのかどうかは不明.
この方法が広まると,税務署が困ってしまうが,通達で封じ込める事も非常に難しい.使うためにはよりよい人間関係が必要なので,広まらないかもしれない.この点,税務署は気にしなくてもいいかも.
と言うことで,読んで損のない本だと思うが,読者は以下の点についても考えて欲しい.
(1) 「子孫のために美田を残さず」という言葉の解説をして財産を残さないという考えを自己中と断言しているが,これはちょっとおかしい... 財産だけ残して喧嘩と堕落を与えるくらいなら自分で稼いだ分は自分で楽しんだ方が,楽しいし,有効需要が増えて内需拡大につながり日本で働く若年層の方が潤いますよと言う指摘でしょう.
(2)最近,日本の品格とかはやっているので,それにとらわれたのか封建制度の家督性の利点のみ強調しすぎている.まあ,男尊女卑で妻を殴るのをよしとしたのがこの時代の品格でありまして(日本の名画を見た外国人は驚いていた),今より優れている思う必要は,(特に女性は)全くないでしょう.職業選択の自由でよき伝統が崩れたと思っているのかもしれないが,そのおかげで思いがけない才能も現れて日本が発展して今日があるのだと思う.
少しけちをつけたが,最後のオマケでは著者の不動産に対する愛情を感じた.この部分だけでももとは取れると思う.