紋切り型のバウチャー批判
★☆☆☆☆
現在、政治の争点としては浮上していないが、児童保育、いわゆる保育所制度について大きな見直しの作業が進められている(実現されるかどうかは不明だが)。そのポイントは、保育所に「バウチャー」つまり保育事業への広義の「補助」を出すのではなく、保育者、つまり親に「補助」を出し、親が保育所を選ぶという制度への転換が検討されている。
本書は、このバウチャー導入に反対をしているのであるが、正直、その批判のロジックは論理の飛躍い上に、紋切り型の新自由主義批判であり感心しない。特にだめなのは、現状の認可保育所制度が抜本的供給制約下にあって、これを解消する具体的見通しを持っていないところ。
一方で、東京都の認証保育所制度を公正な判断根拠も示さずに「だめ」な制度としている点もいただけない。認可保育のひどさもよく聞こえてくる。ある意味で、既得権にあぐらをかいた開業医みたいなもの。
公共事業や技術開発支援などの役に立たない「経済成長」政策や老人医療・介護などよりも、幼児・児童の養育に、もっと公的リソースを割くべきという大きな方向感には同意するが、「保障」(それも完全ではなため、排除された者は、もっとも悲惨となる)の代わりの「自由制限」という仕組みを見直すことを忌避して、抜本的な包摂的仕組みを考えることを拒否するのはどうかと思う。
包摂の下での自由が保証されるべきである。保育を自治体に人質に取られるのはごめんだ。