教科書としての体裁をなしていない。著者の意見表明だけである。
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本書は「教科書」とされているので、医療従事者・介護従事者に向けた「これこれこういう風にやるといいのですよ」という内容のはずである。読み手は、本書の書名からそのような教科書的な内容を期待してよいはずだ。
しかし本書には、教科書に相応しい根拠の提示がまったくない。タイトルが「教科書」ではなく「私の意見」としてなら、楽しめる読み手はいるのかも知れないが‥。
医療や介護の現場、とくに介護は新しい職域であるために、実際に働く従事者達は「どのような接遇をすべきなのか」を真剣に知りたがっている。そういう人たちは「教科書」として本書を手に取るはずだ。なぜなら「教科書」と書名にあるのだから。しかし、そういう真剣な読者に本書の内容はあまりにミスマッチだ。
著者が受けたい医療や介護の接遇があるのなら、人にああしろこおしろと言う前に、著者ご自身で医療や介護の現場にたってみればよいと思う。そうして医療・介護従事者の事情や心理をある程度に理解したうえで、もういちど患者・要介護者の立場で接遇の教科書を書いてみてはいかがだろうか?
医療・介護従事者は患者の気持ちを理解していない‥と陳腐な批判をする人ほど、医療・介護従事者の気持ちを理解していない。「患者の気持ちを理解していない」と医療・介護従事者に指摘したところで、「ではあなたは医療・介護従事者の気持ちを理解しているのですか?」と問い返しをされるだけである。それでは水掛け論ではないだろうか?