理屈抜きに面白い作品だ。本音と建前を探す物語といったところでしょうか？
本作を通じて感じられることは本音の尊さ、建前の無意味さ虚しさでしょう。主人公の本音は暴走していますが、決して嫌味ではありません、むしろ、本当に人を引き付けるのは本音を出せることと言いたいのでしょう。
この作品が授賞作であることに不満はありません。物語も本当の意味で完結していません。あれば次巻が楽しみです。

萌えがウリな感のあるレーベルにおいての最優秀賞。
内容紹介のかけあいをみて、また、萌え特化キャラ属性勝負、全力でお笑いが滑ってのパターンかなと思ってあまり食指が動かなかったのですが、表紙につられて本屋でページめくってみると、意外に楽しそうな文章だったので買ってみたところ、大収穫。

建前を語れなくなり、妄想に歯止めが効かず変態王子の名を全力で表現してしまう主人公。
そして、無表情になってしまった下級生のツンなしゃべりも可愛いこと。お嬢様風な同級生とダブルヒロイン状態です。
なんのかんので、これだけ暴走しといて、学校の実は人気な美少女達を独り占めな主人公のリア充どたばたです。

本編読んできっちりといい仕事する絵師さんとタッグなので、カラーイラストは特に可愛いです。
なお、文章量多めなので妙につまっているので、少し文章がくどく感じるかもしれません。また、主人公暴走すぎなのでキャラ的に受け入れらない人には不向きかも。私にはうわー暴走してるよで笑って許してあげられる面白さのレベルだったので☆５つの評価です。

こんなこと書くと失礼かもしれませんが、ＭＦ文庫といえば「スッカスカでテンプレートな１０分もあれば読める作品を量産するリクルート文庫」という印象でした。
同じ最優秀賞を獲得した『まよチキ！』が余りにも肌に合わないスカスカぶりだったのでそれ以後受賞作に手が出しづらい状況だったのですが……この作品に出会って評価はひっくり返ります。

一人称で読みやすい文章。でもスカスカというわけではなく、ほどよく詰まった文章は、作者さんの新人離れした筆力と語彙力を伺わせます。
また、タイトルどおりの変態っぷりに笑わせていただくと同時に、きっちり締めるところは締めて来るストーリー展開の上手さ。
これに魅力的なキャラクターとイラストが合わされば、もう言うことはありません。

全てがハイレベルにまとまった、大満足のラブコメ。これは最優秀賞も納得です。
キャラクターラフも挟まってイラストも多め。読んでいて本当に楽しい作品でした。