書かれた時代に立ち返って、読んでみること
★★★★★
「作品を、それが書かれた状況に差し戻して読む」というテーマで書かれ、
作品が書かれた当時、流れていた音楽をきっかけにして、作家と作品を読み解いています。
大谷能生自身が音楽家であることも含め、ありそうでなかった新しい文学論。
かなりおもしろいです。
様々な小説家が登場するのだけれど、彼らに共通するのは、戦争や権力からどこか自由に生きているということ。
そして、その傍らにはいつも音楽があり、それが生きることと書くことと不可分なものでもあったということが、ひしひしと伝わってきます。
マンボを聞きながら日劇の楽屋で『楢山節考』を書いた深沢七郎、
くだらなくて、安手で、下品に甘い二村定一『アラビアの唄』を”命より2番目に大事なもの”と言う色川武大(阿佐田哲也)、
”デューク・エリントンの音楽以外は消え失せたっていい、醜いんだから”と『うたかたの日々』に書いたボリス・ヴィアンなどなど。
ここに書かれた文学と音楽が絶妙かつ奇妙に関係しあった「複製文化の20世紀」が、
これからの音楽と文学を考える、何らかのきっかけにもなるような気がしました。