奇人流の人生の指南書
★★★★★
特にローリーファンというわけではなかったが、デジタルTVガイドを購読している関係で、この連載は当初から読んでいた。誤解を恐れずに言うなら、エンタメ界の奇人による、ちょっと変わった人生の指南書といったところだろう。巷の啓蒙本と違って押しつけがましくなく、「妄想」という毒気のある切り口なのもいい。若い頃はコンプレックスのかたまりだったという彼が、物事への視点を変えることによってマイナスをプラスに変えてきた、そのノウハウがエッセイあるいはショート・ストーリーに惜しみなく盛り込まれている。人生の答えは出してくれないが(当たり前か)、物事にはこんな見方もあるのかと気がラクになる。「考えない練習」で話題の新世代僧侶、小池龍之介氏との「妄想は是か非か」対談も、ローリーが小池氏の熱弁を引き出していて痛快。不景気だ何だと世知辛い昨今だからこそ、こういうひねりの利いたポジティヴィティは役に立つ。