表層のスキル
★★★☆☆
いろいろ示唆に富んでいてまさに思考方法のノウハウ本というかんじでした。文章も読みやすい。ただ筆者の揺るがいないバックボーンについてあとがきにほしかった。
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P42 (警視総監同様)じっくりと物事を考える暇も無いのは泥棒も同じ
行動は思考を弱める。アラン
考えていると思っていても単に外界の刺激に対し反応しているに過ぎない
P65 ヒトラーは物事が単純に割り切れないことは知っていた。大衆の感情を操作するため二分法の問いかけを意図的に使った
彼の意図する方向に誘導するための見せかけの選択肢(正or不正、真or偽なら当然、、、)
二分法は分かりやすいから人をひきつける。だが反対者を排除するから、社会は極端なほうに振れる。結果として社会は混乱し、何よりも民主主義が危殆に瀕する。
P89 エピクトテス 自分の自由になるものとならないものを区別せよ
P92 自省録 アウレリウス 物事の本質に迫るためには、その外見を剥ぎとって赤裸々の実態を見るべきである。
魚料理は魚の死体、ワインは葡萄の房の汁、交合は内部の摩擦といくらかの痙攣を伴う粘液の分泌
→全ては小さな取るに足らんこと
P114 直視や即物的思考は裸の事実を直接見るからときとして社会の既成の価値観に匕首を突きつけることになる。→危険視されうる。
P227 憂鬱な人には「遠くを御覧なさい。人間の眼はこんな近距離を長く見られるようには出来ていないのだ」
遍くビジネスの思考に生かせる良書
★★★★★
いみじくも、この著者ご自身が「ものごとを無批判に受け入れる」ことを戒めている。つまり、この本もクリティカルに読み、吟味して受け入れればよいのである。そう考えれば、実に示唆に富んだ内容が平易に書かれていて、座右の書にも相応しい。(自分は定期的にビジネス鞄に入れて、通勤電車で何度も繰り返し読んでいる。)
自分も仕事柄、紛争解決において相手方の対応に腹の立つことも多いが、自分が怒りに寝付けずにいたとしても、それは相手に何ら影響しない(枕を高くしていびきをかいている)という考えは大いに共感でき、学ぶところ大である。自分がコントロールできないことに腹を立てている暇があったら今後のオプションを考える。これは自分への戒めにもなり、部下への指導にも極めて有効。ストレスを抱えてメンタル疾患になりがちな「生真面目」な部下には特に有用。
ただ、「全ての紛争解決は一回的、個別的である」として、事実に即した考えと幅広いオプションを勧めておきながらも、当のご自身は若手の弁護士をステレオタイプに一括りに捉えてお説教しているのは、ベテランとしてのご愛嬌か?
読めば読むほど味がわかる
★★★★★
著者が考え、実践することで体得した経験則が語られたもの 。
その経験則はあまりにも深い。
1回目は「なるほど。ふむふむ」と読み進め、なんとなくわかった気になる。
1年ほど経ち、ふと本書を読み返してみる。自分の1年のわずかな経験に照らし、思い当たるところが多く見つかった。それは主に、著者が悪い例として上げているものであった。
この1年間の自分を見つめ、節々の行動において、何が足りなかったかが明らかになる。
この先、どういった思考で臨むべきかの指針を示してくれる。
ただ、その指針は、性質上簡単に実践し
、身につけることのできる類のものではない。それが本書に示される経験則の深さである。
本物は簡単に身につくものではない。
意識的に思考を実践し、経験を積むことで、徐々に著者の言わんとしてることが具体的に理解できるようになるのだろう。
何度も読み返す価値のある良書。
タイトルと内容に齟齬あり
★★☆☆☆
「三〇年,四〇年とビジネスの社会で生きていると,用意周到さこそ身を救うことを知る。
依頼者から,「誰々を解雇したい」と相談を受けたときは,念のため私はあらゆるリスクを話すようにしている。
不良社員を懲戒解雇した場合でも,解雇権の濫用を理由に元社員が訴えてくるリスクがないわけではない。たとえ五パーセントでもそのリスクがあるなら,助言しておく。そうでないと「弁護士に相談したのに訴えられた」と悪者扱いされてしまう。」(163頁)
上記は「なるほど」と思ったが,概して,内容的には,プロ弁護士ならではの視点というものは感じられず,成功した経営者が古典などを引用しながら処世訓を述べている本という以上のものではないように感じた。
なお,「矢部正秋」は,「法曹期別名簿」にも載っていないし,ネットで検索しても(本の著者という以外)引っかからない。略歴にも,司法修習の期が記載されていない。日本での法曹資格を持っているのだろうか?
思考は束縛されている(^ω^;)(;^ω^)
★★★★★
人生は、思考によってつくり出される。
●直視する
人は自分の見たいようにものを見る。自分というフィルターを通して見ている。われわれは権威、権力に迎合し、伝統、因習、常識に毒されている。これらは思考を束縛している。
●こだわらない
人生にとって、どうでもよいことには、こだわらない。そうすれば、よく状況に適応できる。自由にならないものは、受け入れるほかはない。身体、財産、名声、運命などはどうにもならない場合が多い。
●論より証拠(根拠)
裁判では証拠がなければ負ける。正しい者が勝つ訳ではない。根拠を考えるときは、具体的に箇条書きしてみる。
何とかなるだろうという根拠なき楽観では、状況に流され、遠くを見ることができない。
●正しい意見はない。
意見は主観にすぎない。意見は複数成立する。多数意見はあっても、正しい意見というのはない。
反対意見に学ぶ。他人のデータベースにアクセスするようなものだ。
失敗から学ぶ習慣を身につけると、失敗を恐れなくなる。
●オプション(選択肢)を発想する
人生の問題に正解はなく、選択肢があるだけだ。
オプションを広げるには極論を考えてみる。極論は、大胆な発想をするための突破口となる。
●マサカを取り込む
将来を考えるとき、予想外の事態が起こることを計算しておく。近い将来は3割のマサカ、遠い将来は7割のマサカが起こる。
●主体的に考える
受け売り思考を辞める。
紛争は感情を排して冷静に処理する。紛争が理屈で決まることはほとんどない。
●遠くを見る
自然に接すれば、自分がいかに小さな存在であるかが実感できる。自己中心的な物の見方を反省できる。広々とした空間に目を向けると眼はやすらぐ。その時、思考は自由となる。
状況を俯瞰する。高所から自分を含む全体を見通す。自分を全体の状況の中で位置づける。近くと遠くとを交互に見る。考える遠近法をとる。