二胡のCDというとなぜか耳なじみの良いカバー曲がほとんどで
良い演奏のものもあるのですが二胡の良さを出し切れず、
ただただ曲自体が「中華風」になってしまい残念に思っていたのですが、
このCDは違います。
目を開いているにもかかわらず、新緑の山、切り立った崖、痛いほど澄んだ空気、滝
それから、鳥や虫やけものたち、咲き誇ろうとする花、花
自然の厳しさとやさしさと、人生のはかなさ・悲しみがぐわっと押し寄せてきます。
うまく説明できずもどかしいですが、二胡の修行中の方は必聴だと思いました。

中国楽器に惹かれます。特に二胡のポルタメントのかかった響きは懐かしく哀愁を感じるほどです。このCDは、1997年2月28日、3月1日に江蘇人民放送局で収録したものでした。奏者の朱昌耀氏は1956年生まれで、収録当時、江蘇省歌舞劇院の副院長という重職に就いている国歌一級演奏家の称号の持ち主です。技術的な水準は申し分なく、世界トップ級の技術の冴えがここに収められています。

冒頭の阿炳の「二泉映月」は、二胡の古典的な名曲と言われている作品です。実際中国でこの曲の演奏を聴きましたが、とても情緒のある曲だと思います。これはその模範演奏と言えるでしょう。阿炳はリーフレットに「伝説的な盲目の芸人」と書かれていました。
2曲目の劉天華の「空山鳥語」は、鳥の声を模倣するなどかなり斬新な技法の曲です。
3曲目の「聴松」も阿炳の作品で、不思議な香りが漂っていました。
4曲目の「漢宮秋月」は他の楽器でも合奏されるなど親しまれている作品です。
5曲目の「流波曲」は、奏者の朱昌耀の作曲した作品で、縦笛の簫との合奏曲です。いずれも二胡の多彩な魅力が伝わってくる楽曲でした。

13曲収録してありますが、いずれも本格的に二胡の音楽を知りたいという人には興味深い曲群だったと言えるでしょう。ケレン味なく、真っ当な二胡を愛する人のために奉げられた企画だからこそ、大切にしないといけません。音に透明感があり、二胡の豊かな響きに聴きほれます。現代では多くの二胡奏者の音楽を日本で聴くことができるようになりました。世界の音楽の多様性を理解できるほど、日本の音楽愛好家のすそ野の広がりを感じます。そこから中国の伝統音楽の美しさに触れていってほしいと思います。

二胡を扱ったＣＤは結構出ていますが、独奏でしかも中国古来からの曲を演奏している物はあまりありません。
私は他のＣＤも購入しましたが、満足できたのはこの商品が初めてでした。
なんとも形容しがたい哀愁に満ちた音色が胸に染みます！
やはり二胡の音は中華の音楽を演じた時が最も映えますね。
元々ジャズ好きで、お酒の友にしていましたが本ＣＤも仲間入りです。
聴いていると落ち着きますよ。