まさに昭和初期落語名人奇人のドキュメンタリー
★★★★☆
昭和初期、あるきっかけから著者の「橋場の家」に売れない落語家が出入りするようになった、という発端から一気に読んでしまった。その落語家達とは、当時柳家三語楼に弟子入りし甚語楼と名乗っていた志ん生、柳楽だった八代目の三笑亭可楽、圓楽から馬楽になりたての後の彦六など。桂文都(後の九代目土橋亭里う馬)など名人とは呼ばれなかったが強い個性は放つ他の多くの落語家も含め、劇作家として名を成す前から数多くの噺家との交流のあった著者ならではのエピソードがふんだんに書かれている。同じ文庫の底本と他の著作からの抜粋で再構成された結果、エピソードや表現が重複することが多いことを1点減点するとしても、よくぞ復刊してくれた得難いエッセーかつ落語史ドキュメンタリーの傑作である。