やはり。取り調べの可視化は必要である
★★★★☆
冤罪は、ウソの自白はどのようにして生まれるのか。
手に取るようにわかる。
人間は弱い、人間は思い込む。
やはり。取り調べの可視化は必要である
自白のメカニズムがよくわかる
★★★★★
私は以前から、自白偏重型の冤罪事件について「なぜやってもいない犯行を自白するのか」と思っていた。
この本は、宇和島事件、甲山事件、仁保事件、袴田事件の4つをとりあげながら、むずかしい用語を使わず、具体的な事件をたどることで、冤罪を生み出す構造を見事に浮き彫りにしている。
本書でとりあげられている事件はいずれも古い事件であり、この本の出版年度も2001年とけっして新しくはないが、足利事件や鹿児島の選挙違反事件(志布志事件)、富山・氷見事件など、警察の捜査手法が問題になる事件が続いていることからすると、いま現在にこそ読むべき本といえる。
不適正な捜査事件の頻発を受けて、国家公安委員会は2007年11月に「警察捜査における取調べの適正化について」を出し、警察庁は2008年1月に「警察捜査における取調べ適正化指針」を出している。
一方、日本弁護士連合会が「『警察捜査における取調べ適正化指針』に対する意見」を出している。
これらの事件そのものや、適正化指針の是非について考える際にも、机上の空論にならないために、本書を読むことはとても意義があると思います。お勧めします。
一見の価値有り
★★★★★
文中に拷問的な取り調べとあったが、まさに拷問としか言えないような取り調べ。
未だに、取り調べ時の映像・音声がないとのが不思議なくらいだ。
いかに、容疑者を犯人に仕立てる様がよくわかり、執拗な取り調べでやっていないのに
自分が犯人だとなりきってしまう心理が良く分かりました。
自分が被疑者になった時を想像するととても怖いです。
自白の心理学
★★★☆☆
『捜査記録には「さしもの袴田も、おえつしながら」自供したと記されているのだが、はたしてそれは真犯人の自白であったのだろうか。』p162より
タイトル…極めてオーソドックス
構成…具体的事例のあいだに心理学的見地から被疑者の言動のメカニズム、取り調べ官の行動などを解説
法心理学の入門書にという動機で選んだのだが、教科書というよりは知的好奇心を満たす読み物という色が強かったように思う。
第一〜三章の心理学の知識は非常に興味深いものがあったが、後半は単に過去の事件を順を追って説明しているだけで、心理学という形をとらずとも良かったのではないかと思う。
p101の「いまの苦痛と遠いさきの悲劇」は、まさしく虚偽の自白をしてしまう被疑者の心情を明確に論述している。
冤罪の構造
★★★★★
題名にある「自白」とは「嘘の自白」のことである。
なぜ、無実のはずの人が嘘の自白をしてしまうのか?
自分に不利となるような自白をなぜしてしまうのか?
そして、尤もらしく見えてしまう嘘の自白はなぜ真実に見えてしまうのか。
この本はそのような「嘘の自白」の構造を追求した好著である。
宇和島事件、甲山事件、仁保事件、袴田事件の4つの冤罪事件を題材に嘘とはなにか、なぜ嘘をつくのか、どうして嘘の自白は一見尤もらしく見えてしまうのか、それらの嘘の自白を見破るための方法といった問題を論じていく。
一度放たれた言葉は一人歩きする。
一人歩きし始めた言葉は周囲の人々の思惑を吸い取って過剰に成長する。
そこに冤罪が発生する余地がある。
尋問に圧迫が存在するのは致し方ないことである。
無実であってもその場を逃れたいために嘘をついてしまう人は今後もいなくなることはないだろう。
これから必要なこと、それは嘘の自白を見抜くことだろう。自分を有利にするための嘘だけではなく、自分を不利にしてしまう嘘もある。どちらの嘘であっても真実を覆い隠していることには変わりはない。真実を明らかにするために嘘を見破る力が必要である。