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金翅のファティオータ―四界物語〈1〉 (C・NOVELSファンタジア)

価格: ¥945
カテゴリ: 新書
ブランド: 中央公論新社
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大賞受賞…??? ★☆☆☆☆
思うに、作者が「こういうのが、あたし好きなの!」と全力で主張している作品だと思いました。
だから、「私も好き!」というふうに世界観に入れる人にとってはよい読み物になると思います。

でも、私はそうは思えなかった。なので低い評価です。
なにより、文章に致命的なバグがあります。
このままでは意味や、キャラが成立しません。
読んでいて5回ほど、本を破り捨てたくなりました。
穿った見方になりますが、作者は思い込みの強い人ではないでしょうか。
文章の繋がり、単語の意味を一つ一つ吟味して選んでいるというよりは、自分の思いの赴くままに書き連ねている感じがしました。
また、自分では説明したつもり、描写したつもりになっていることが多すぎるのでは。でも残念ながら、作者のイメージが紙面から浮かんではきませんでした。

また、ファンタジー作品の肝である独自の設定、物語内で使われる言語や名前のセンスが悪いと感じました。
いろんな世界観、他作品からのいいとこ取りをするのはかまわないのですが、統一感がまったく見られません。

それに加えて2つの民族の関係があまりに不自然です。
純血主義のように見えて、優劣があるようにも見えます。
しかし優劣があるのなら、混血が純血より低く扱われるのは疑問。
実際にどうなのかも大事ですが、現実にどういう立ち位置なのかが考えられていないのでは。
このあたりが後々説明されるのでしょうか?

台詞回しも???となる場面が多いです。
個人個人がケースごとに口調を変えるのは当然のこととしても、それがあまりにも突飛過ぎたり芝居掛かっていすぎで気持ち悪いです。

キャラの作りこみが残念です。
基本、イケメン美女は善いもの、それ以外は悪いもの、という構図のように思えます。まあ作者の趣味でしょうか。
また、上に挙げたような理由もあり、キャラの統一感が無い気がします。作者の理想を全部ぶち込んだらこうなりましたという感じがします。

全体的に、底が浅いという印象を受けました。
やりたいこと、目指したところはなんとなく朧気に理解できます。
「竜」というファンタジックな装置を話の根幹に据えた物語は、ドラクエを例に挙げるまでもなく、とてもワクワクするものです。ファンタジーにとってはこのワクワクが何よりも大事だと思います。
ですが、残念ながらこの作品はそれを昇華するだけの技術やノウハウや論理が欠けているのかな、と思いました。

ただ、絵はとても綺麗でした。
賞レースはバカにできない ★★★★★
さすが大賞受賞に恥じない佳作だと思います。
売れないと続編が出ないだろうから、ぜひ売れて欲しい。
このレビューが役に立つかわからないけど・・・

オリジナリティやストーリーテリングの巧みさは当然として、
作品世界の描写がすごくみずみずしいです。
波の上を駆ける馬。
人の世に同化した異種族の禍々しさ、美しさ、その神秘、歌声、まなざし、海底の双子の国、失われた過去の約束、現世の悲劇、竜の心臓、この世のものとも思えない刺客たち、孤独な美貌の第一皇子と、共鳴する孤児、真の竜の王の幼生、

ストーリーを思い返すと、目の前はやはり一面の海。それも頭上に海。
海上を駆けて竜の眷族を倒す爽快感と、過去に囚われて水底に沈みゆくような気だるい気分を同時に味わえるお得な一冊。

一巻でほっとんどすべての手札を明かしてしまって、あとはそれを使ってどうゴールするかという・・・
出し惜しみしてないから中だるみもなく、どこの局面をとっても無駄がない濃密さ。
登場人物たちも当然ながら魅力的で、その孤独も悲哀もひっくるめて魅力的で、次巻で会えるのが待ち遠しいです。
売れるといいなあ・・・