重い真実の記録
★★★★★
1943年(昭和18年)、理工系以外の大学生が大量に軍隊入りした。本書はその14期生海軍飛行予備学生を中心とした若者の儚くも熱い「青春の軌跡」をつづっている。
淡々と、事実が記録されていく。余計な感傷めいた言葉はない。当時の戦況や学徒達の手紙や言葉が時々に挟まれつつ、終戦数年後まで若者達がどう死んでいったか、どう生き延びていったかが書かれている。
あの時代に青春を過ごした彼らは、エリートだった。学歴も知識も教養も体力も十分以上にあった。やがて日本を背負って立つ筈の彼らの生を、時代は無情に奪い取っていく。
中で、特に印象に残った言葉。
「彼らは戦った。意地もあるが、一粒の麦、地の塩になる決心をして未来の日本に夢を託そうとしたのである。」
その彼らが今現在の日本を見たら、どう思うだろうか、と思わずにはいられない。教育や家族の荒廃、ミーイズムの助長。彼らが命をかけて守ろうとしたものが、今の日本に残っていることを願う。読後感じたものは、深い無情の感であった。簡単に「かわいそうだ」とか「ひどいな」とか言えない。すさまじいまでに重い真実の記録。しかし、これが現実だった。
二度と帰れないと最初から分かっている狂気の作戦、すなわち特攻や人間爆弾「桜花」「回天」などの使用が二度となされないよう、私達は全力で今の平和を維持して行かなければいけない。そう思った。
最後に。御霊よ、安らかに。