私がこのアルバムで驚いたのは、ここで聴ける彼の素直さだ。トリスターノのもとで築いた硬質な音の感触はそのままに、心の赴くまま音を紡ぎ続けるような自然体の彼がいる。決して情緒的ではない、シンプルな響きの音が、聴き手の体の中を流れるように通り抜けていく不思議。
コニッツは、理性の力で無理矢理捻り出したような無味乾燥な音楽をやるミュージシャンではなかったのだ。
私はこのCDで、初めてコニッツのサックスの「音」の魅力に気付き、コニッツのリズム感の絶妙さを知った。1957年の作品なのだが、音が非常に良い。ルディ・ヴァン・ゲルダーの録音も良かったのだろうし、デジタル・リマスターも良かったのだろう。思えば昔聴いた「モーション」は、カセットテープにダビングしたものだった。ジャズ・ミュージシャンを理解する上で、音の質は極めて重要な気がする。
因みに、私は白人ジャズに根強い抵抗感があるのだが、このメンバーはなかなか見事だと思った。特にビリー・バウアーのギターは新鮮で、かなりバップな感覚もあって意外だった。・・・反省。