ヒーリング系ピアニストの元祖ともみなされているジョージ・ウィンストンは、1949年生まれ。少年期を自然に恵まれたモンタナ州で過ごしていた頃は、野球とバレーボールに明け暮れる毎日で、音楽は演奏どころか聴きもしなかったという。音楽との出会いはロックグループのドアーズがきっかけで、それ以来ブルース、R&B、ジャズなどさまざまな音楽に出会い、特にスウィング・ジャズのピアニスト・作曲家・歌手のファッツ・ウォーラー(1904-43)の強烈な影響を受けている。ウィンストンの音楽に癒しパワーの源となる“揺らぎ”があるのは、そうしたルーツに秘密がありそうだ。
11曲目の「マウンテン・ウィンズ・コール・ユア・ネーム」ではプリペアド・ピアノによる特殊奏法を駆使。14曲目「バンブー」は中国の箏にインスパイアされてできた変奏曲的作品。フランク・ザッパの作品も収録するなど、変化に富んだ曲のバラエティが嬉しい。どんな新しいアプローチを行っても、ウィンストンらしい詩情の世界を作り出しているのはさすがだ。なお、日本盤には「バンブー」の原曲に忠実なバージョンがボーナス・トラックとして追加され、ピアノ譜も付録になっている。ウィンストン自身による長文の楽曲解説も読み応えがある。(林田直樹)