柔らかなシンセ・サウンドと甘い声に包まれる至福の40分
★★★★☆
オランダの精鋭サウンドクリエイターNicolayとラップグループLittle Brotherの一員Phonteで構成されるユニットThe Foreign Exchange。
ラップ中心の1作目・歌ものにシフトした2作目に続く3作目の登場。Nicolayの敷く柔らかなシンセサウンドとラッパー出身とは思えない程
スイートな声質と繊細なコーラスワークから成るPhonteの歌の組合せは聴き手に最高のリラクゼーション・浮遊感・哀愁感を提供する。
本作は歌ものに方向転換した2作目の延長上にある。ユニットの根底にある美意識の高さはデビュー時からぶれることなく、相変わらず
ジャケット写真の様にメランコリックな色を湛えた美しい電子ソウルミュージックを聴かせてくれる。
これまでに無い強いビート感溢れる冒頭の「The Last Fall」ではPhonteの多重コーラスがひたすら快感。プラスティックな感触のピコピコ
ループにロック・ギター音を絡めた「Authenticity」、Phonteがソウルフルな歌からラップに自在にギアを変える「Maybe She'll Dream of
Me」、ひたすら下降する様な珍妙なプログラミング音が耳に残る「Make Me a Fool」、彼らがプロデュースした最新作「Ballad of Purple
Saint Jame」が好作だった女性歌手Yahzarahが軽やかで美しいリードボーカルを採る終曲「This City Ain't The Same Without You」等、
統一感あるサウンドの中でも微妙に変化をつけ、11曲39分を一気に聴ける良く纏まった作品となっている。
3作聴いてきて感じたことは、彼らの音楽は作品毎に大きな劇的な変化があるわけではないしその必要もないということ。夢心地な雰囲気
に包まれた電子音と歌から成る個性は彼らのシンボルであり、ありそうで無いモダンソウルの美しさをこれからも追及し続けて欲しい。
デビュー時の衝撃は流石に薄れたものの彼らの過去作を愛聴した方には間違いなく推薦できる作品であり、彼らの存在を知らなかった方
も一度試聴してみて欲しい。